生き返ったら彼女が【男の娘】だった件@

 休日の晴天の午後……紗那と翔摩は、公園のオブジェっぽいベンチに並んで座り。
 サンドウィッチ専門店で買ってきた、名物カツサンドを食べていた。
 食べながら翔摩が言った。
「さすが、午前中で売り切れるほどの名物サンドウィッチだな……うまい」
「そうだね、二人分買えてよかったね」
 人の気配がない公園……ちょうど、木陰で人目につかない、この場所はカップルの野外セックスポイントだった。
 紗那と翔摩も、サンドウィッチを食べたあと、キスをしながら翔摩が紗那の胸や腰を服の上から触って、いつものように愛撫をするのが定番の流れだった。
 サンドウィッチを食べ終わった二人は、唇を重ね合い……翔摩は紗那の胸をまさぐってから背中に手を回して腰を擦り紗那の体を愛撫した。
 そして、そのままオブジェ的なベンチに紗那を押し倒した。
 仰向けで翔摩に押し倒されキスをされ続けている紗那の目に、こちらに向かって一軒家ほどの直径がある隕石が水蒸気をまとって空から落下してくるのが映った。
「んんんんんん……!?」
 逃げ出そうとしている紗那を、何を勘違いしたのか翔摩はギュッと抱き締める。
「んぐッ!! んぐッ!!」
 落下してくる隕石の存在を知らせようと、紗那を抱き締めたままクルッと上下の位置を入れ換える。
 仰向けになった翔摩は、間近に迫ってくる隕石の恐怖に固まり動けなくなった…………そして。
 ドドドッ──ン……プチッ……グシャ。紗那と翔摩は、いきなり空から落ちてきた隕石に押し潰され……圧死した。


 圧死した紗那と翔摩の魂が濃霧の世界を漂っていると、近くで女性の声が聞こえてきた。
《やっちゃったなぁ……新しい世界に着任した、軽い挨拶代わりの隕石落下だったのに……落下地点の目測、ちょっとズレちゃったなぁ……まさか、あんなところに人がいたなんて、想定外だったなぁ》
 女性のタメ息が聞こえ、なにやら掻き回されているような感覚を感じた。
《しゃーない、不注意で潰しちゃった人間を再生しておくか……肉体を乳化して再生の素をまぜまぜ》
 二人の魂に空白の時間が流れ、また女性の声が霧の中から聞こえてきた。
《う〜ん、なんか再生前の肉体とは、ちょっと違っているような気も……ま、いっか。さてと、魂をもどすか……って、どっちがどっちの魂だ?》
 今度は、お手玉でもされている感覚が二人にあった。
《え──い、運任せで肉体入魂!!》
 紗那と翔摩はズシッとした肉体の重みを感じた。


 しばらくしてから、紗那と翔摩は目を開けた。
 目の前に地面から少し浮かんで、見下ろしている裸の女性と目が合う。
 天女のようなフワフワ空中を漂い浮かぶ布を、腕に軽く巻いて体が浮かんでいる裸の女性が言った。
「あっ、蘇生した……本当は死んだ人間を生き返らせるのは、自然の摂理に反するんだけれど……今回は特別ということで」
 紗那と翔摩はキョトンとした顔で裸で浮かぶ女性を見る。二人は上体を起こす。
 最初に口を開いたのは男の翔摩だ。
「なんだ? あんたは?」
 翔摩は、喋った直後に自分の口を押さえる……翔摩の口から出たのは女の声だった。
 隣から男の翔摩の声が聞こえてきた。
「あたしが……横にいる?」
 翔摩と紗那が顔を見合わせる、そこには自分自身の顔があった。
「なんじゃこりゃ!?」
 紗那と翔摩は、自分の服装を確認する。
 翔摩は紗那の服を着ていて、紗那は翔摩の服を着ていた。
 紗那と翔摩の肉体と魂は入れ替わっていた。
 浮かんでいる裸の女性──新しく世界の統一神に着任した女神が腕組みをして言った。
「あちゃ、逆に入ったか……まっ、いっか」

 女神は別次元の世界から、この世界の統一神として新たに着任してきた神だと二人に告げ。
 その挨拶代わりに軽く隕石を落としてみたが、手違いで紗那と翔摩を潰してしまったので再生したのだと言った。
「いやぁ、魂の性別鑑定って素人女神には難しいもので、玄人の神なら魂をひっくり返して底を見ただけで、オスかメスか判別できるんだけれどねぇ」
 紗那と翔摩が振り返ると、オブジェ的なベンチがあった場所に一軒家ほどの直径がある隕石が半分ほど地面にめり込み、シューシューと水蒸気が上がっていた。
 ゾッとしている紗那と翔摩の耳に近づいてくるパトカーのサイレンが聞こえてきた。

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あきゅろす。
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