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Left Story
赤い迷彩






ねえ わたしは あなたの何なのかな








[赤い迷彩]









窓の外を見て、ため息をついた。
恋のため息とは違うため息。

面倒くさそうに欠伸をすれば、ふと君と目が会った。











「なに?」


「別に何も、」









睨みつけるような冷たい目で、私を見れば 彼もため息。

嫌いなら 一緒にいなければ良いのにな。



テーブルに並べられたケーキは、全部彼のモノ。

私には何もない。



赤い髪をぐしゃぐしゃといじると、私の方を向いてこう言うの。











「ケーキ、追加していい?」











私はその言葉に笑顔で頷く。
好きだから、好きだから拒絶出来ない。

財布の中にある数枚の千円札は、全部赤い髪をした彼の為に飛ぶ。

甘い香ただよう中に少しの香水。


丸井くんの香水。




丸井は机に並べられた色とりどりのケーキを口に頬張る。

その顔をニコニコと見つめる名字。





私は丸井くんの財布だ。
丸井くんの欲しいと言ったモノは全部あげるの。

金も体も知識も全て、私のモノは丸井くんのモノ。




バイトは中学生だから出来ない。
丸井くんと関わってから、家からこっそり持ち出す事が多くなった。

もう引き戻せない位スキなの。


財布の中から消える紙切れと反比例して、丸井くんの気持ちは冷める。


自分でもわかってるの。




丸井くんは前と違う。

目が 手が 心が 冷たい






店を出て、手を繋ごうと近づいたら拒否されてしまった。

どうしたら良いの?





どうしたら 私に笑ってくれるの。






悲しくて涙がこぼれる。
こんなにスキなのに届かない心。

丸井くんは他の子を見てる。










「ねぇ、丸井くん」


「あーわりい、今日で終わりにしよ」











立ち止まった公園で、申し訳なさそうに頭をかいて丸井くんは言った。

一瞬何が何だかわからなくて、必死に込み上げる何かを抑える。












「本気で好きな奴出来たからよー、もうこういう繋がりなくしたいんだ」













頭が真っ白になる。
言ってる意味がわからない。

「名字は彼女じゃなかった」それだけは確かな事で、それを受け入れられなかった私が勝手に彼女だと思ってしまっていた。



行き交う車のヘッドライトが眩しい。







丸井くんは真っ直ぐ私を見て、また頭をかいて言った。










「名字には悪いと思ってるよ、でも…」











その子が大好きだから。

丸井が言うと同時に名字の何かが弾ける。


名字はこくんと頷いて、悲しそうな笑顔を丸井に向けた。









「…わかった、」


「あぁ、悪ぃ」











後ろを向いて、丸井を見ないように自宅に向かう。

本当は追いかけて来てくれるのを期待してる。








「…」












追いかけて来てくれる訳ないじゃないか

私は丸井くんにとって都合の良い女。




後ろを向いても、スキな君はいない。










羨ましいな、丸井くんの想い人。

その人なら、きっと丸井くんは追いかけて来るんだろうな。


必死に走って。








眩む夕方が目に痛い。
車のヘッドライトが私を照らす。


私にとって丸井くんは全てだった。




丸井くんにとって私は?







考えれば考えるほど、切なく悲しい関係









でもね、一つ変わらない事がある。






わたしが丸井くんをずっと好きだって事

誰よりも私が愛してるの













2008/04/02

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あきゅろす。
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