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最期の言葉










(音楽流れます。微かに聞こえるぐらいでどうぞ。)


藍のかかった夕暮れを過ぎた夜空。

その空の下に二人、草の上に倒れていた。
一人は黒髪で金色の鎧を身に纏っていた。

もう一人は、漆黒のマントを纏い、白銀の髪をしていた。
その白銀の髪をした者の名は シェゾ・ウィグィィ…
神を汚す華やかなる者という意味だ。
しかしその姿は、返り血と己の血に塗れていた。
そして本来なら深い海にも夜空の藍にも見えるその瞳は、光が消えかかり焦点が合わずに漂い、いつもの威厳が消えかかっていた。


瀕死の状態だった。


もう一人の勇者はもう…。

シェゾは必死に焦点の合わない目でラグナスを見つめ続けていた。

『ラ…グナ……ス』

声を上げたかったけど無理だった。

シェゾの瞳は時を経つごとに弱弱しくなっていった。








暗い………

ただひたすらに暗い。

闇の魔導師の俺が闇を怖がるのは可笑しい話だが恐れを抱くぐらい暗かった。

「…」

あいつと一緒に戦った中で失敗はなかった。


けれど今回は違った。


俺らがあまりに不利なほうに回っちまった。

「…くそ!」

此処で悪態をついても仕方がない。けれど、どうしようも
なかった。

と、懐かしい光が溢れる。

「!」

はじめは不安定だったその光は徐々に形を作り…。

「!?」

最も愛しい者になった。






「ら…ぐ……なす?」




「シェゾ」

思わず抱きつきたくなる衝動を押さえ、シェゾはいとしいものの名を呼んだ。


「シェゾ…一緒に逝こう?待っているからさ…」

優しく、手を差し伸べる。
優しい光に包まれる。


「…あぁ。お前と一緒ならどこでも逝くさ」

手を取る。
その時、光が強くなり二人を包んだ。







光を失ったシェゾの目が一瞬だけ光を取り戻し、



微笑んだ。



そして最後の言葉
「…ありが……と」
そう言って、その瞳を閉じた。





流れる涙を蒼い月が照らした。





闇の魔導師。
その運命からは逃れられなかったけど


光に触れられた。









今度は何処へ逝く?


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