小話
花嫁修業?(ハオ葉・ホロ蓮)
「おい、葉。居るか?」
玄関からコンコンと軽いノックの音と一緒に、聞き慣れた人物の声がする。
「おぉ居るぞ、蓮。入って来いよ〜」
とユルく応えるのは、この平凡なマンションの一室の住人・麻倉 葉。
ダークブラウンのドアが開き、赤いエプロンを着た隣の隣の部屋に住む道 蓮が葉の部屋にやってきた。
「これ、杏仁豆腐だ。姉さんに教えてもらって作ってみたんだが、貴様にも分けてやる。感謝しろ」
―――全く、相変わらず素直じゃないな〜。まあ、蓮らしいけど。
そう思ったことは蓮本人には内緒だ。
顔には本音が出てしまっているかもしれないが。
「さんきゅー蓮♪美味そうだな〜。てか、蓮また料理が上手くなってんな。」
「当たり前だ。これも修行なのだからな。」
「ホロホロも喜ぶぞ、きっと♪」
「なっ・・・!何を!!!俺は別にあいつの為にやっているのではない!!」
必死に否定する蓮だったが、顔が赤く染まってしまっていてバレバレだ。
自分でも赤面しているのが分かったのだろう、蓮はプイとそっぽを向いてしまった。
少しの沈黙。
先に口を開いたのは蓮だった。
「コレの作り方を教えてやる。ハオには貴様の作ったものの方が良かろう。」
「教えてくれるんか?!さんきゅー!!蓮!」
葉はうえっへっへ、と独特の笑みを零しながら台所に向かい、蓮に作り方を教わった。
―――その後。
職場から帰宅したホロホロとハオを待っていたのは、それぞれの想い人手作りの甘い甘いおやつだった。
*304号室*
「うめえ!!さっすが俺の蓮!またつくってくれよな♪」
「…構わんぞ。だが残すなよ。」
ほんのりと色づく蓮の頬に、ホロホロは感謝の意をこめてそっとキスを落とした。
*306号室*
「へえ、葉が作ったの?この杏仁豆腐。」
「蓮に教わって作ったんだ。食べてくれるか?」
食べないわけ無いじゃないか。ハオはそう心の中で呟くと、葉に微笑した。
(ぱく。)
「・・・。」
「・・・ハ、ハオ?不味かったか?」
不安そうな声で自分に尋ねる葉がかわいくて仕方ない。
「すごく美味しいよ、葉♪」
ハオは満面の笑みで答えた。
その笑顔と言葉で葉も嬉しくなり、ふたりは微笑み合った。
『愛しいひとへの甘い甘いプレゼント!』
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