小話
夏祭りにて(ハオ葉)
「うん、甘い。」
ペロリと自らの唇を舐めてハオは独り言のように呟いた。
「葉の口の中、いちごの味がするよ。甘酸っぱい感じが葉に似てるな♪」
目の前の双子の兄はいつものにっこり微笑を浮かべて恥ずかしさの欠片も無しに、川の土手に押し倒した弟――つまり葉――に言う。
「そりゃ…さ・・き…かき氷…食べた・・から…な・・」
先ほどの深くて長い長いキスのため、葉は息も絶え絶えに返事を返す。
そうしてでも返事をしてくれる葉に、ハオは愛しさを感じずにはいられない。
無論これは葉の性格であって、自分だけに向けられている事じゃないと気づいてはいるが。
それでも自分に懸命に応えてくれる愛しいひとの姿は、嬉しいものだ。
ハオは葉の茶色がかった綺麗な髪をゆっくり撫ぜてやりながら、葉の呼吸が整っていくのを待った。
葉は撫でられて心地良いのか、目を閉じてハオがするままに身を預けている。
夏祭りは始まって少し時間がたち、そろそろ花火があがる頃になっていた。
君と一緒に居られるのなら、この騒がしい祭りの雰囲気も我慢できるかもしれない。
何年経っても、同じ場所で共に時を過ごせればいいな。
ひゅるるるる・・・どぉん!!!
「始まったよ。」
「おう。」
・・・・・・・・・
「「綺麗だ(ね)(な)」」
・・・・・・・・・・
「…ハモったね。」
「…そうだな。」
どちらもどこかくすぐったそうに、でも嬉しそうに笑った。
「また来ようね。来年も。」
次の年も、その次の年も。
「…最初は嫌がったくせに。」
やっぱり来て良かっただろ?と葉は得意そうに、また笑う。
「葉と二人だから、いいんだよ。」
「…そうだな。」
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