小話 葉くんのポニテ(ハオ葉) 「あれ、今日はポニーテールにしてないの?」 ロードワークの途中でふいに斜め後ろ(きわどい位置)から声がした。 ……正直振り返りたくない、けど。 このまま前だけ向いてても声の主に良いようにされるだけ。 …自分の身はちゃんと自分で守らんとな。 「……ハオ」 「かわいいから好きなのにな―」 "かわいい"……とても一卵性の双子の弟捕まえて吐く台詞じゃねえ。 「オイラは男だっ!!アレはもうせんっ!」 「なんで」 ……は?"なんで"? 「なんでって……そりゃあ…」 ハオはオイラの前に来て行く手を阻んで、必要以上に顔を近づけてくる。 「ど・う・し・て?」 「…お前分かってんだろ…!」 お前は心が読めるんだから、いちいちオイラに言わせんな。 「『葉の綺麗なうなじが見えて、イイな』…この言葉の所為かな?」 心の中で毒づいて逃げようとしたオイラの肩を掴んで、ハオはわざと耳元で甘く囁いた。 知らず知らずのうちに、熱が耳から顔面へと伝わっていく。 「…うっせーぞ…!!」 「ふふ、紅くなっちゃって。かわいいv」 「だ―――っっ!!!もうお前ついてくんなっ!!」 …―――そのあともしつこくハオは追ってきたけど、さすがにオイラたちのいる宿舎に近づくと(しつこい位の恨めしそうな視線をオイラに浴びせて)しぶしぶ居なくなった。 やれやれ、今回はうまくまけた。 前回はまんまとハオに野外で押し倒しされちまったからな… 「………っ」 思い出すだけで恥ずかしさで顔が紅く染まってしまう。 明日も同じコースをランニングしないといけないのに、と思うと今から気が滅入った。 神様、オイラ修行がんばってんだから、せめてあのブラコン愚兄をオイラのところへ来させないで下さい………。 天にいるであろう神様に向かってオイラは切に祈った。 end. [次へ#] |