涼宮ナツキの憂鬱
第五十八話
ナツキは昼の授業はかなり上機嫌で、俺は気が楽だった。朝のメランコリー状態が嘘のように思えた。
そんなわけで今日の授業も終わり、あとはSOS団に顔を出すだけだ。そういえば今日は何かあったな……
俺はSOS団部室の前にいる図書館の番人に挨拶をして部室のドアをノックをした。
「はーい」
かわいらしい声がする。この声は長門さんだな。
「ちわっす」
メイド服姿の長門さんに一礼していつもの席に座る。あれ?今日は長門さんだけなんだ。
「古泉さんは補習で、美春ちゃんは追試だそうです」
ああ美春はアホだし、一樹先輩は来年受験だしな。まあ忙しいんだろう。
言うのを忘れていたが今は5月も半ば、つまり中間考査が終わった頃になる。俺たち最初の高校のテストは、ナツキが上の上、俺が上の中、長門さんが中の上、一樹先輩は学年は違うが俺と同じくらいらしい。そして問題は美春。こいつは小学校の頃から勉強が苦手で、よくテスト前に泣き付いてくる。その度に教えてやってはいるのだが、こいついつの間にか寝てやがるんだよな……
「ナツキは母さんの手伝いにかり出されてたからしばらくは来ないですよ。あの野郎死刑だとか言って自分がさぼってんじゃねえか」
「涼宮さんは私よりえらいですし、仕方ないですよ」
そう、ナツキは半端なく頭が良いのだ。掲示板に貼り出されてた成績を見て驚いた。なんとナツキがトップにいるじゃないか。しかもほぼ満点で。俺でもこんな点はとれないぞ。
「まあこんなの当たり前よ」
とその場では軽くナツキは流したのだが、その日以来俺は闘争心が湧き、いつもより勉強時間を一時間増やしている。
「思い出すだけで嫌になります」
「そういうキョウさんも学年10位じゃないですか」
二人の教師の間に産まれた子だからかどうなのかは知らんが、一応俺もそれなりに勉強はできているつもりだ。平均点85は俺にとっては当たり前なのだが、ナツキに比べればまだまだ子どもだ。
「ナツキに勝てなければ意味ありませんよ」
俺は長門さんの煎れてくれたお茶をすすり、一息つく。
「今度私にも教えてくださいよ」
「俺でよかったらいつでもいいですよ」
「ありがとうございます!」
いやあそんな顔されるとこっちが嬉しいですよ。
と、俺はおもむろに胸ポケットにはさんだシャーペンを取り出すと、一枚の紙が落ちた。
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