涼宮ナツキの憂鬱
第五十五話
ナツキのメランコリーオーラを存分に浴び、ようやく解放される昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴る。まあ解放されるのは一瞬のことだがな。
「しまった」
キッチンの机の上に俺の弁当を忘れてきてしまった。やれやれ今日は昼飯抜きだなと考えていると、
「どうしたの?」
相変わらず機嫌の悪いナツキがたずねてきた。
「弁当忘れてきちまったんだ」
俺が苦笑混じりで答えると、今日はじめてナツキが笑った。
「仕方ないわね、ちょっと来なさい」
いつものように引っ張られて……ってあれ?
「ほら、ぼさっとせずに行くわよ!」
ナツキの様子がいつもとおかしい……ような気がする。ナツキの後をついていくが、なんか落ちつかねえ。
なんか胸がそわそわしたまんまナツキと一緒に着いた場所は、
「……屋上?」
「そ、風が気持ちいいでしょ?」
まあ確かにそうだな。夏と春の境目、5月半ばの空は青く澄み渡っていた。
「で、飯は?」
とはいえ腹の虫はおさまるわけもないのだが、
「あんたにはデリカシーってもんはないの?」
悪いな、そんな機能俺には備わってないんだ。
「ちゃんとあるわよ」
ナツキはかばんに手を突っ込み布で包まれた何かを取り出した。
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