涼宮ナツキの憂鬱
第五十話
「話はそれだけよ!」
そっぽを向いたまま言い放つと、俺は背を向ける。
「そうか、なら俺は帰るぞ」
「とっとと帰りなさい」
わけわかんねぇ。お前が呼んだんだろうが。
「明日も来ないと死刑よ!」
わかってるさ、死刑は嫌だからな。
日が傾き真っ赤に染まった空の下、俺は一人帰ろうとしていたのだが、
「ご一緒していいかな?」
今日はやたら俺に絡んでくる一樹先輩が正門の前で待っていた。これが女の子なら嬉しいんだがな。特に長門さんとか……
「ははっ、俺が女の子ならよかったかな?」
「一樹先輩が女の子なら俺はとっとと帰りますよ」
今日は妙に手厳しいな。なんだかこの人には弱味を握られているような気がする。俺は一樹先輩と並んで一緒に下校することになった。
「えっと、今日はなんで?」
「話しておきたいことがあるんだ。いいかな?」
廊下で現れた一樹先輩の顔が今ここで再び現れた。
「長くなりますか?」
「そんなことはない。すぐ終わるさ」
なんなんだろう、この一樹先輩には逆らえない。そんな気がしてならない。
それからしばらく無言で歩いていた。
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