涼宮ナツキの憂鬱
第十八話
ハイキングコースを走って下ると、
「いた」
ナツキがいた。あの顔のままで。俺はすかさず声をかけた。
「おいっ、涼宮」
初めて涼宮ナツキの名前を呼んだ。そんなこたぁどーでもいい、ただ俺は、
「何よ」
口調だけはいつも通りのようだ。
「お前な、人を巻き込んどいて逃げんなよ」
「はあ!?ワケわかんない」
「お前が俺を誘ったんだろうが。やるからには最後までやれよ」
「もういいわよ。あたしが馬鹿だった。お姉ちゃんの真似なんてあたしなんかができっこない」
「母さんの真似?」
母さんがお前みたいなことをしたことがあるのか?まあいい、ただ俺が言いたいことは、
「お前なぁ、誰かの真似なんてできるわけないだろうが」
「あんたには関係ないわよ」
「いいやあるね」
「何言ってんのよ。あんたになんか……」
「なってやるよ」
俺はこの時決意した。
「何によ」
「SOS団とやらの、団員になってやるよ」
涼宮ナツキの前で宣言した。俺はSOS団団員になると。迷うことなく言い放った。
「だから何よ」
「俺は母さんの真似なんてしたくない」
「え?」
「だから約束しろ。お前がSOS団をお前の手で楽しくすると。団長として、この俺に。じゃねえとさっきの発言は撤回する」
ナツキは固まった。石像のように。ただ俺はそれが腹立たしく、
「どーなんだよ。ハッキリしろよ」
ナツキは顔を赤くして、
「わかったわよ!やればいいんでしょやれば!」
俺はにたりと笑い言ってやった。
「言ったな?忘れんなよ、お前が約束破ったら俺はすぐ辞めてやっからな。覚えとけ」
ナツキはますます顔を赤くして、
「あたしに不可能の文字なんてないわ。あんたの予想以上に面白くしてやるわよ」
「さっき挫折しかけてたじゃねぇか」
「うるさい」
どうやらナツキは元に戻ったようだ。ただ俺が鮮明に覚えているのは、
「さあ、明日からビシビシ働いてもらうわよ」
ふりかえった時のナツキが俺に初めて見せた本物の笑顔だった。
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