涼宮ナツキの憂鬱
第十六話
高校の図書室は中学とは桁違いでかなりの広さがあった。図書室と言う場所を俺は3年で1回利用するかしないかくらいしか来ない俺でもそのくらいわかる。
「有希、部屋使うわね」
「わかった」
母さんは理科の教師長門先生(ホントはどの教科でも教えられるらしい)に許可を取ってある部屋に入った。
「へぇーこんな部屋があるんだ」
一見部室のようにも見えるのだが、机や椅子、本棚の他に冷蔵庫、パソコン、コンロなど日用品もある。ただ、ハンガーラックにかかった大量のコスプレは誰が着るのだろう。
「で、新しいクラブの設立って?」
「あたしたち、新しいクラブを作りたいんです。部員はまだ集まってませんが、必ず集めてみせます」
ちょっと待て、俺は入らねぇぞ。言っても無駄だと思うが……
「どんなクラブを作るの?運動部?文化部?」
「両方です」
コイツは部活を2つも作る気か。1年がそんなこと出来るわけないだろう。
「で、名前は決まってるの?」
「はい。20年前に設立されたSOS団を復活させたいんです」
「……」
母さんは黙りこんで何かを考えている。どうしたんだろう、さっきと様子が全然違う。ちょっと怖い。
「……ダメね」
母さんは厳しい顔でそう言った。
「どうしてですか」
ナツキが強い口調で言う。無理もない、これくらいなら俺にもわかる。
「そもそも、部活または同好会設立には5人以上の部員と活動内容がはっきりしないと認定できない。あなたは今どちらもクリアしてない」
「うう……」
ナツキは下唇を噛んでうなる。
「出直してきなさい」
そう言って母さんは部屋を出ていった。あんな母さん見たことない。
「なんで……お姉ちゃんならわかってくれると思ったのに」
ナツキはそう言ってしばらくそこから動かなかった。
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