涼宮ナツキの憂鬱
第十二話
きっかけ、なんてのは大抵どうってことないものなんだろう、おそらくこれがきっかけになったのだろう。これ以来HR前のわずかな時間にナツキに話しかけるのが日課になりつつあった。しかしナツキがまともな答えを返したのは驚きだ。話しかけた俺もどうかと思うが。
だからナツキが翌日法則通りではなくばっさりと髪を切った事に動揺した。俺が指摘した次の日に短くするのってのも短絡的すぎないか、おい。
ちなみにその日の会話である。
「なんで髪切ったんだ?あれはあれで似合っていたのに」
「別にあんたには関係ないじゃない」
「そうだけどさ」
「まだ何かあんの」
話しかけない限りコイツは何のアクションも起こさない。だから俺もいろいろ気を使ってるわけだが、
「全部のクラブに入ってみたってのは本当か。どこか面白いとこがあったら教えてくれよ」
「ない」
即答。
「でも一つ気になる部はあるわね」
あるじゃないか。
「へぇー。どこだ?」
「SOS団っていうの」
なんじゃそりゃ。学校のパンフにも載ってなかったぞ。
「なんか20年前に非公式で発足したみたいなんだけど、その部の生徒が卒業したあとは名前だけ残ってるみたいなんだけど」
そんなものがあったのか。あとで親父にでも聞いてみよう。
「これは謎よね。一種のミステリーよ」
二回も同じことを言わんでいい。
「で、そこに入ると」
「興味はあるんだけど、部員が5人いないと活動できないってめんどくさい規約があるのよねー」
と、ナツキが言う。嫌な予感が……
「ねぇ!」
「何だよ」
「あたしに協力しなさい!」
「は?」
「つべこべ言わずに協力しなさい!決行は今日よ。謎は待ってくれないからね!あたしは部屋を探しておくから、あんたは書類を用意しなさい」
「ちょっと待て。俺は入るともなんとも言ってないぞ」
「いいわね!」
「……ハイ」
ナツキの気迫に負けてしまった。
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