涼宮ナツキの憂鬱
第一一三話
手を伸ばしたまでは良かった。だけど手が固まってしまって動かない。
息をのむ。こんな威圧感がこのドアにまとわれているなんて思ってもみなかった。だけどいつまでも突っ立っているわけにもいかない。俺は決意した。
俺はドアノブを回した。
……?
ドアノブが石のように固まって動かない。右にも左にも動かない。もちろん押しても引いても動かない。
まさかこの部屋、俺を裏切るつもりなのか?
ちょっと待て。そんなの酷すぎる。俺にはもう希望もくそもないのか?
俺は必死になってドアノブを動かそうとした。だけどうんともすんとも言ってくれない。
そうすると俺の手に白く細い手が重ねられた。
「ここはだめ」
俺の耳にかすかな声が届いた。
その声の主は図書館の番人、長門有希先生だった。
「でも……」
「ここはだめ」
さっきと変わらぬ口調で長門先生は言葉を発した。
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