涼宮ナツキの憂鬱
第一一〇話
教室に入ってまず確認したのは、やっぱり俺の後ろの席だった。机といすはあるもののナツキの姿はない。昨日からわかってたことだ。驚くことはない。
そう思いながらも溜息が出るのはなぜだろうか。
「なんだキョウ、朝からしけた面して」
「お前には関係のないことさ」
谷口がからかいに来たのか俺の席の横にしゃがみこんだ。
「またいない女のこと考えてたのか?お前いいかげん諦めたほうがいいんじゃないのか」
この一言が火種となったらしい。俺の怒りという爆弾に火がついた。
「なんだって?もう一回言ってみろ」
「だから、諦めたほうがいいんじゃねえのか?」
「てめえ、人の気も知らないで気安いこと言うんじゃねえ!」
俺は谷口に怒りをぶつけていた。いつの間にか谷口の胸座(むなぐら)に手が回っていた。
「悪い、悪かったから、手を離してくれ」
苦しがる谷口を前にして俺は我に帰った。谷口に八つ当たりしたってナツキが帰ってくるわけじゃない。何をしているんだ俺は……
「すまん。やりすぎた」
一言谷口に謝ると、俺は教室を出た。
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