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涼宮ナツキの憂鬱
第九話
谷口の話の続きになるのだが、一つだけ気になる話があった。

「でもなぁ、あいつモテるんだよな」

飽きもせずに聞いてた国木田もそろそろ限界が来たようで、谷口の話を流しつつ弁当をようやく食べ終わったみたいだ。

「なんせツラがいいしな。おまけにスポーツ万能で頭もいいんだ。ちょっとばかし変人でも黙ってりゃ、んなことわかんねーしな」

「それにも何かエピソードがあんの?」

弁当をかたしながら国木田が問う。

「一時期は取っ替え引っ替えだったな。俺の知る限り、一番長く続いて一週間、最短では5分で破局なんてのもあったらしい。例外なくあいつから振るんだが、その時に『普通の人間には興味ないの』って言い放って振るらしい。だったらOKすんじゃねーよ」

こいつもその被害者なのかもな。そんな視線に気付いたか、谷口は慌てたふうに、

「聞いた話だって、マジで。何でか知らねえけど告られて拒否することがないんだよ。三年の頃にはみんなわかってるもんだからアイツと付き合うヤツなんていなかったけどな。だから、お前が変な気を起こす前に言っておく。やめとけ」

やめとくも何もそんな気はねーしな。

この時期、涼宮ナツキはまだおとなしい頃合いで、つまり俺にとっても心休まる月だった。ナツキが暴走するにはまだ一ヶ月弱ほどの猶予がある。しかしながら、ナツキの奇矯な振る舞いはこの頃から徐々に片鱗を見せていた。

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