涼宮ナツキの憂鬱
第九十九話
「何を言ってんだ?涼宮ナツキを忘れたのか?」
忘れたいってのは解るが、そんな冗談は俺には通じねえぞ。
「谷口は知ってる?」
焼きそばパンをほおばりながら谷口は首を振る。お前ら、そんなに俺をからかいたいのか?
「おいおいおい、あのナツキを忘れたのか?」
「だーかーら、うちのクラスにそんな名前の人なんかいないって。キョウ寝ぼけてんの?」
国木田の顔はマジだった。そんな顔されたら冗談とは思えない。
「国木田」
「何?」
「頬を引っ張ってくれないか?」
「いいの?」
「ああ」
一刻も早く俺は夢から覚めたかった。とっとと目を覚ましていつもの非日常に戻りたかった。いや、非日常に戻ると言うのも変かもしれないが……
「ほれ」
国木田より先に谷口が頬を引っ張った。
「何しやがる!痛えじゃねえか」
「当たり前だろ。頬を引っ張ってんだから」
「で、目は覚めた?」
「夢じゃないのか」
俺は全く信じられなかった。
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