涼宮ナツキの憂鬱
第九十八話
梅雨という季節に差し掛かり、雨の降る日が多くなってきた。ただでさえ気が滅入ってしまうというのになんでこう降り続けるのであろうか。
いつものハイキングコースには傘が花のように咲きほこっていた。
教室に入ってまず見たのは俺の後ろの席である。昨日と同じようにナツキの席は空席だった。
まあそんなことなど関係なく漫然と午前中の授業を終え、昼休みとなった。
俺は冷え切った弁当箱を鞄から取り出していると、国木田が昼飯と椅子を持ってやって来た。
「キョウ、ご飯食べよ」
弁当箱を俺の机に置き、椅子は机の横に置いて椅子に座った。
「谷口は?」
「購買にいってるよ。今日はパンだって」
へえ、珍しいな。毎日でっかい弁当箱を持って貪り食ってんのに。
俺は弁当の包みをほどきながら思った。こいつと谷口と同じクラスになって以来、こいつらと昼飯を食うのが習慣化しているなと。
そんな無駄なことを考えてるうちに、購買で戦ってきた後の残る谷口が教室に戻ってきた。
「今日は焼きそばパンゲットしたぜ」
「へえ、よかったじゃないか」
焼きそばパンは購買の売れ筋1であり、ゲットするのはかなり困難だと言う。一回チャレンジしてみたが、早々に諦めた。あの塊をかきわけて買う気になんてなれないからな。
「ここ空き席だったよな?」
「そうだよ」
「じゃあ、座ってもいいよな」
「おいおいおい、そこはナツキの席だぞ。あいつに何されても知らないぞ」
俺がそう言うと、谷口も国木田も驚いた顔をしていた。
「俺、何か変なこと言ったか?」
「あのさ、ナツキって誰?」
国木田はわけの解らんことを聞いてきた。
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