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とりあえずLOVEる アラジン



男の回りには驚く程のルフが飛び交っていた。寄り添い浮かぶルフに照され、輪郭さえ見えなくなるときがある。数年前にはじめて出会った頃のアラジンさえまだ慣れない現象に、疑い深いシンドバッドたちは戸惑うばかりだ。更にアラジンが可愛らしい桃色の唇で指を挟み、男をここに置いておくれと頼むのだから、頭が痛い。


「えーっと、とりあえずアラジン。この人は誰かな?」

「こんだよ」

「人間か?」

「どうしてそんなこというの?」


人間以外になにかあるのかい?
アラジンの真っ直ぐな問いかけに、シンドバッドはあるから聞いてるんだ、とは言い難かった。代わりにジャーファルがアラジンの首から下げる笛を指摘する。

「紹介したい人がいるんだよ」とアラジンは先ずウーゴくんを呼ぶように笛に息を吹き込んで、このこんはウーゴくんと同じようにこの部屋に出てきたのだ。人間なのかと疑っても仕方がない。そのこんは出てきて一度も目を覚まさず、すうすうと穏やかな寝息だけを立てている。皆がこんに注目する中、アラジンが問題発言を口にした。


「こんはね、人間で間違いないよ。この世界の人間ではないけどね」

「えっ」


アラジンは寝ているこんに「寂しいんだよね」と呟き、こんの長細い手をとると、指先にちゅっとキスを落とす。彼なりの慰め方らしいそれは、周りには恋人同士のソレにしか見えない。十いくかいかないかの小さな子供の大人っぽい仕草にドキリとさせられた。顔を赤らめたり、背けたりする大人をよそにアラジンは首をかしげて、ニパっと笑う。小悪魔だ!小さい小悪魔がここにいる!
シンドバッドは少し不安になった。この悪どい小悪魔感が歳をとるにつれていくとなると、とんでもないタラシになりそうだ。


「こんを起こしたらきっとこのお兄さんの人柄が良く分かると思うんだ!起こしていいかい?シンドバッドおじさん」

「構わないが。この人数がいて起きないとなると難しいのではないかな」

「四人じゃ当たり前さ。きっとこんは周りに百人いたとしても起きることはないと思うよ」


まるで自慢のように、えっへん!と胸を張るアラジンに、こんのことを知るアリババとモルジアナ以外は何もいえない。反対にアラジンのしたいことを悟ったアリババは慣れたようにアラジンをこんの枕元に下ろす。そして照れくさそうに壁側を向く。その意味はすぐにわかった。

アラジンが薄い唇に勢い良くぶちゅーと口づけたのだ。子供らしいキスだ。しかし長い。十秒、三十秒、一分経っても唇は離れる様子はない。気まずい。だが目がそらせないのは、窓から射し込む光がアラジンの爽やかな青色とこんの深い藍色の髪をキラキラと反射し、一枚の絵のように見せるからだろう。

それから何分経ったのか、誰も一言も喋れない異様な空気を打ち破ったのは、漏れ出す吐息のような音だ。アラジンの顔がゆっくり離れていく。繋がる透明な糸は見なかったことにして、部屋にいる全員がこんに目を向けると、数回瞬きをして目が開いた。近くにいたアラジンと直ぐ様笑い合っている。

――おはよう。こん
コツンとアラジンが額を合わせた。こんは手を伸ばしサラサラな髪をくしゃくしゃと、かき混ぜるように撫でる。じゃれている様子は兄弟を思わせた。


「こんお兄さん、良く眠れたかい?」

「……ああ、少しスッキリした」


こんの声は長年出していないような掠れた、聞きづらい声だ。しかし心地よい低音でセクシー。後ろで控えていたモルジアナが「素敵……」と心臓に手を当てている。シンドバッドもこんの出す癒しオーラに気を緩めるしかない。タラシさではアラジンと良い勝負しているといったところか。


「君の名前を教えてもらっても?」

「……」

「アラジン、彼が喋ってくれないんだが」

「警戒してるのかい?お兄さん」

「そこだ」

「どこだい?……あ、お兄さん?」

「私のことはお兄さんと呼ばなくていいといったはずだ」

「ああ〜っごめんよ!これは癖で悪気があったわけじゃ……」

「しってる。これからは気をつけて」

「!もちろんだよっこん!起きてくれてよかった」

「もう少し熱烈に起こしても構わないが?」

「今日はたくさん人が見てたからね。恥ずかしかったのさ。でもこんが構わないっていうなら、僕は頑張るよ」

「じゃ、今」

「え!今かい?ううう〜恥ずかしいなあ」


頬に両手を添えるアラジンをこんは挑発するように、けれど優しくアラジンの後頭部を撫でた。その大きな手に導かれるようにアラジンは先程とは比べものにならない大人がする、相手の唇を貪り付くようなキスをする。これは咳払いして中断させてもいいのだろうか。
――いいわけないだろ?
キス中のこんの視線と合った気がしたシンドバッドはジャーファルとその他の子供たちを連れて部屋を出た。なぜだろうか。あの一瞬で彼の思ってることが聞こえた気がする。

なあ、と聞くと私も、と隣のジャーファルが答えた。

「なにそれ怖いね」
「ほうっておきましょう。今は」
「……うん」


この後、新しい部屋がこんに譲られ、アラジンが通う日々が続く。






トリップ特典でぐーたらするしかない固定主とそんな男と出会ってしまったアラジンの末路……という設定w






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