劉尚 繋がれていた手が離されて、たった一人で闇の中にいた。 最初から、離されると分かっていてその手をとったはずだった。 けれど一度とったその手を離すことなんて、私には出来なかった。 「尚香殿、尚香殿!」 「え…?」 気が付くと、気遣わしそうな顔で私を見ている玄徳様がいた。 「一体どうされた。何か、悲しいことでもあったのか?」 「いえ、何も…というか、私がどうかしたの?」 いつの間にか眠っていた私は、玄徳様が心配している訳が分からないのでそう尋ねる。 すると、玄徳様は微笑みのような、困ったような顔を浮かべた。 そして何も言わずに私の頬に手を伸ばして、何かを拭った。 それが私の瞳から流れた涙だと気付いたのは、玄徳様の優しい瞳と向き合ってからだった。 「尚香殿、貴女が強い方なのは私もよく知っている…だが、いつも一人で抱え込まないで欲しい。本当に辛いことがあったら、私にも、頼って欲しい」 その言葉を聞いて、私は更に涙を零した。 なんて優しい言葉なんだろうと。 そして、その言葉が私にその手を離すきっかけを与えないのだと、思ったから。 「ありがとう。玄徳様」 私がそう言って玄徳様に笑いかけると、玄徳様も笑ってくれた。 「今日はもう休まれた方がいいだろう、私はこれから出掛けなくてはならないが…」 「任せて!玄徳様のお留守は私が守るわ!」 「そうか、では留守の心配は要らないな」 その後、二言三言交わして、玄徳様と別れた。 別れた後、私はこの先もずっと、あの人と一緒に居たいのだと改めて思った。 けれど、それが無理なことは嫌というほど分かっている。 さっきの夢がきっとそのことを表しているということも。 それでも、 ずっと一緒にいることを夢見た (叶わないと分かっていても) . 劉尚好きな方とわざわざ一票投じてくれた壱ちゃんに捧げます! 101027桜餅 [次へ#] |