短編 観察日記(紅勾) ※現パロ 勾が手帳を買ってきた。 「おい勾よ」 「なんだ?」 「俺が頼んだジャガイモと玉ねぎとカレー粉はどうした?」 「悪い、忘れた」 「そうか、じゃあこれは?」 「買ってきたからあるんじゃないのか?」 ……頭が痛い。 「どうやったら夕飯の食材が手帳、しかも五年用の高いやつになるんだ…」 「馬鹿を言え、ちゃんとお前が言った通り値引きしてあるものを買ったんだぞ」 勾がずいっ、と文房具屋のレシートを見せる。 うん、確かにこの手の手帳の相場より、格段に安い値段にはなっている。 だが、論点がズレていると思うのは果たして俺だけ何だろうか? 「いや、買うなら値引きされてる方とはいつも言っていたが、まさか手帳を買ってくるとは思わなかった…」 「そうだな、私も衝動的に買ってしまった気がしてきた。」 いつも計画的な勾にしては、とても珍しい。 そんな彼女が買ってきたのだから、きっと使わずに無駄にすることはないだろう。 と、とりあえず軽い溜め息一つで終わった。 「はぁー…まあ買ってきてしまったものは仕方ない、か…でも珍しいな、お前が『時』を記録するものを買ってくるなんて」 「そうだな…私達にとって、時の流れは早すぎる…」 「たしかにな」 「だから私としては、」 「?」 「そんな流れを少しでも残して置けるように、買ったのかな」 「かなって…」 「この手帳が終わる頃には、お前のへたれが少しは治っているといいな」 「なっ…」 「…騰蛇、鍋が吹きこぼれそうだが」 「!そうだ、カレーの材料!」 「あと5分したらすぐそこのスーパーでタイムサービスが始まるみたいだぞ」 「そうか!じゃあ行ってくる!鍋見ててくれ!」 「わかった、気をつけてな」 そうして紅蓮を見送った勾陳は、買ってきたばかりの手帳をパラパラとめくっていた。 「(まぁ、観察日記程度につけるか…)」 そう思案する勾陳の顔には、楽しそうな微笑みだけが浮かんでいた。 日常再録 加筆修正 101004 [*前へ] |