短編
暑い(紅勾)
※現パロ
「勾」
「なんだ」
「暑いんだが…」
「そうか、私はそうでもないが」
そう言って、涼しい顔で本を読み続ける勾には俺の言ってる意味が伝わっていないようだ…
「そりゃあな、俺がこうして扇いでやってるからな…というか何故俺はお前を扇いでいるんだろうな?」
そう、俺は何故か手近にあった団扇で自分ではなく勾を扇いでいる。
「体が勝手に動いたんじゃないか?」
「んなわけあるか!…いい加減太陰か白虎に代わってもらうか…」
そう思って、二人を呼ぼうと立ち上がろうとすると勾が本から顔を上げ言った。
「二人は今出かけている…それに私はそこまで涼しさを求めてないしな」
「いや、だから俺が暑いんだが…」
「もう少し…」
「ん?」
「もう少しの間は、騰蛇が扇いでいてくれると、嬉しいんだが」
「は?」
「駄目か?」
こ、勾が!
こんなに自然に頼みごとをするなんて…!
な、夏ボケの可能性もあるがこれは滅多にない機会だ!
…ありがとう夏、ありがとうこの憎らしい程の暑さ…
そうやって心の底から色々と感謝の言葉を述べていると、目の前にコップが差し出された。
「騰蛇、アイスコーヒー入れてくれ」
「ああ…」
先ほどの喜びを噛み締めつつ、俺はコップを持って台所へと向かった。
*
「ねぇ勾陳」
「ん?昌浩か、お帰り」
「ただいま…何で太陰達呼ばないの?二人共家に居るよ?」
「ああ、あの二人の風は涼しいが、近くで読み物をしていると少し風が強すぎてな…もう少しで読み終わるから、それまで騰蛇に扇いで貰おうと思ったんだ」
「…なんか紅蓮、やたらと嬉しそうだったけど…既に夏ボケも始まってる気もするし…」
「そうだな、あれだけで安請け合いするし…元々単純だが、暑さにやられて余計だな」
「まあ、いいんじゃない?本人は嬉しそうだし」
「そうだな」
「おーい、勾ブラックでいいのかー?」
そんな会話が行われているとは知らず、紅蓮は人数分の飲み物を嬉しそうに用意していた。
終
7月17日UP
日常再録
加筆修正100813
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