小噺
願い事、ひとつ (島迅/七夕)
ーこの空に君は何を願う?ー
<ー願い事、ひとつー>
(あ、今日って七夕か)
キツい練習の後、暑さに加えて梅雨の湿気で汗だくの桐青高校野球部が駅に着くと、そこには浴衣姿の人々が楽しそうに行き交っていた。
気付いたところで野球部に七夕は関係無し、そして今日は曇り、残念ながら織姫と彦星は再会できなさそうだ。
なんて冷めた事を思っている慎吾の前に、大きな笹が目に入る。その下には「ご自由にどうぞ」というメッセージと共に色とりどりの短冊が置かれていた。
(みんな好きだねぇ…)
「わぁ、楽しそうじゃない!?みんなで書こーよ!!」
しかし、気付いたら利央の一言でメンバー全員が笹の下に集まっていた。
みんな、好きだねぇ…
最初は渋っていたタケとかマサヤンまで、ちゃっかり書いちゃって。恐るべし七夕。
そして、ちょっと離れた所でいそいそと短冊に何かを書いている子がここにも一人。
「迅はなんて書いたのかなー?」
「うわっ!!し、慎吾さん…!!」
後ろから覗こうと思ったら、物凄い速さで隠されてしまった。こんな動作まで速くなくても…。
「いいじゃん、ホラ」
「や、ですーー!!」
腕を引っ張って見ようとするがそこは迅だ、頑なに抵抗を続ける。
たかが七夕にそこまで恥ずかしい願い事を書いたのか。
いや、もしかして…
「あっ、」
ーチャンスは突然やって来た。
何があったかはよくわからないが、気が付いたら迅の短冊はヒラヒラと宙を舞って、キレイに俺の足元に落ちてきた。
「あぁあ、慎吾さん、見ないでっ」
「残念、もう遅いよー」
今度は俺が素早く短冊を拾い上げる。
"もっと速く、"
…あれ?こんだけ?
もしかしたら「慎吾さんと一緒に〜」とか書いてたりしないかなーなんて思った自分が急に恥ずかしくなってきた。
でも、真っ直ぐな字でハッキリ書かれたその一言で、なんとなく伝えたいことがわかる辺りが迅らしいなと思った。
「もういいでしょう!?返してください!!」
「はい、ありがとなー」
まだ必死になって訴えている迅にあっさりと短冊を返すと、慎吾はさっきの場所に置いてある、薄っぺらい紙を手に取った。
(ーたまにはこういうのもいいかもしれないな)
「ー慎吾さん?」
「迅、付けてこよう?」
自分の短冊の感想も無しに急にそう言われて戸惑いつつも、慎吾の書いた内容も気になる迅は一緒に付ける事にした。
どうやら自分たちが一番最後に来たらしく、その笹には既に他の部員の短冊が付けられていた。
「…"和さん愛してます"とか告白じゃねえか」
「もはや願い事じゃありませんね…本さんは"マサヤンかわいい"って書こうとしたんですかね?」
「…だろうな、消されてっけど。みんな七夕の何たるかを全くわかってねえ…」
そんな事を話しつつ、2人の短冊もその一部となった。
自分のちょっと斜め下に付けられた短冊を見て、迅は顔の火照りを押さえることができなかった。
慎吾も自分の短冊に、今更ながら恥ずかしさがこみ上げてきた。
(てか、俺たちのも願い事じゃないような…)
そうして2人はさっさとその場を離れて、いつも通りの部活帰りへと戻っていった。
ーそれはささやかな願い事
"もっと速く、"
"もっと強く"
翌日
ー"抱きしめて!! 島崎慎吾"
「…はあぁ!!?」
「慎吾さんはやっぱりいやらしいっすね!!」
「名前まで主張しないでよねー!!恥ずかしい!!」
「ちげぇよ!!どう見ても3つ目の字が違うだろ!!」
後日談、
Yさん、Mさんの証言:
「なんか"決まった…!!"みたいな顔して帰ってる慎吾が許せなかったから」
「キモかったから」
end.
…どんなオチだよ!!あぁあ、やっぱり即興は酷いですね、意味わからん文ですみませ……orz(土下座)
というワケで、ひっそりと上げておくことにします;;
ちなみにオチは葦月ちゃんからの提案でしたがぶちこわしてしまったうわあぁあんごめんなさい!!
とにかく七夕に何かしたかったんです…(苦笑)
時期が恐ろしく違う事は突っ込まないでいただきたい、です…!!
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