小噺
たくさんの幸せを君に(栄口誕生日/水栄)
今日という日に、ありがとう
〈たくさんの幸せを君に〉
ーHAPPY BIRTHDAY!!ー
「栄口く…おは、よ!!」
「はよ!!」
「あの、お…おめっ」
「うん、昨日はありがとな」
ーいつも通りの朝。相変わらずな三橋の言葉の意味を理解して、栄口はにっこりと笑って礼を言う。
6月8日、今日は栄口の誕生日。
そこで昨日は三橋の家を借りて誕生日会が開かれたのだった。
当日に行いたかった所だが、今日は栄口の父が割と長かった出張を終えて帰って来る日だった。
そうすると勿論栄口家で誕生日祝いをするだろう。
ならば家族間の邪魔は出来ない。メンバーは話し合って前日の土曜日に部内でお祝いをする事にしたのだった。
沢山のご馳走、ケーキ、部員全員からのプレゼント。
練習後だったのであまり長い時間ではなかったけれど。
どれも嬉しくて楽しかった。
前の巣山達と同様にハッピーバースディを歌われるのはとても恥ずかしかったが。
断ろうとしたが時すでに遅し、気が付けば田島の号令で一斉に歌われるハッピーバースデー。
お世辞にも上手いとは言えなかったが、その気持ちだけで栄口が満足するのには十分なものだった。
そんな誕生日会は大盛況の内に幕を閉じ、その延長線が今日である。
みんな律儀なもので、疲れているだろうに全員がほとんど0時にメールをくれた。一番最初に届いたのは水谷からで、気合いの入ったデコメールに思わず笑みがこぼれた誕生日の始まり。
そして三橋を初めとして、朝練の合間に次々と野球部全員から本日2度目のおめでとうをもらったのだった。
いつもより20分早く練習が終わったのは監督からのさり気ないお祝いなのだろうか、しかしそれでも相当の疲労を抱えながら部員はグラウンドを去った。
よろよろと自転車を漕ぎながらも、その速度はいつもより少しだけ速い。
昨日からずっと祝いを上げてくれた分、帰りの挨拶はほどほどにそれぞれが帰路に着く。
少しでも早くと最後まで気を使ってくれた友人達に感謝しながら、残りの道を見る。
「じゃ、行こっか」
「うん」
そう言ってへにゃりと笑いながら一緒に自転車を漕ぐのは水谷だ。
彼は何度となく栄口の家に通っている為、もはや家族ぐるみの付き合いだった。姉、弟とはちゃっかりメールをしたりしている。
なので今こうして水谷が隣にいることは自然な事で、真っ暗な道を2人で話しながら家へと向かっていった。
「ただいまー」
「お邪魔しまーす!!」
そう言っていつものように2人でリビングへ行くと、テーブルには栄口の好物がたくさん並んでいて、席にはもう家族が座っていた。
栄口の父とも会ったことのある水谷は、「こんにちはー、またお邪魔します」と軽く挨拶する。
栄口の父は、さっとシャワーに入ってきなさい、と促す。水谷はその笑顔が栄口にそっくりだなと思った。
そして言われたとおりに練習での汚れと汗を急いで流して席に着き、ようやく栄口の誕生日会本番が始まったのだった。
少しすると、足取り軽く大きな箱を持ってくる水谷の姿。トイレにでも行ったのかと思っていた栄口は不思議そうに箱を見つめる。
そんな栄口を見て、満足気に水谷はテーブルに箱を置いた。
「いくよー…」
じゃーん、と満面の笑みを浮かべた水谷が取り出したのは、真っ白なクリームと鮮やかなフルーツで彩られたケーキだった。その箱に書いてあったケーキ屋の名前は、いつだったか2人でCD屋に寄った帰り道に見つけて、いつか食べたいと言っていた所のものだった。
そういえば朝練に来るのが少し遅かったような気がする。
栄口が家を出た後、水谷は彼の家にこれを届けてから学校に来たらしい。
それにしても、水谷がここまで自分の家族とコンタクトをとっているとは。
ケーキを取り出してきても誰も驚かない所を見ると、どうやら自分以外の全員が知っていたらしい。
「すごいけどさぁ、ケーキは昨日三橋の家で食べたのに、わざわざ…」
「だって今日は特別じゃない!!絶対ここのって決めてたんだから!!」
普段は見せない真面目な顔をこんな場面で見せられ、栄口は驚きながらも呆れたが、今日は素直にその好意を受け取ることにした。
落とされた照明、見えるのはテーブルの中心にあるぼやっとした光。
「せーの、」
「ハッピーバースディ、ゆうと!!」
水谷の声と同時に、どこで用意していたのかクラッカーの音が弾けて、静寂は破られる。
呼応して蝋燭の炎が一瞬揺れた。
それを眺めたまま、家族と水谷の目が輝く。
部内の誕生日会とは違い、我が家ではいつもだったらここまでベタな祝いはしない。これも水谷がいるからこその展開だろう。少し照れくさそうに栄口は前を向いた。
今日はいつもなら埋まることのない5人用のテーブル席が全て埋まっている。
父と姉と弟と、水谷。
その中心で今お祝いをされているのは、間違いなく自分で。
「ありがと」
いつもより少しだけはにかんだ笑顔でそう言って、全員の期待する通りにふーっと息を吐く。その一回でゆらゆらと光を灯していた炎は姿を消した。
「やったー、おめでとう!!!」
たかだか蝋燭の火を消したぐらいで、とても4人分とは思えない拍手が家中に割れんばかりに響く。
ぱっと明かりがついて真っ先に飛び込んで来たのは大好きな家族と、
「さかえぐち、おめでとう」
「ありがとう」
まだまだ続く、優しく温かい時間
この温もりは、きっと明日も明後日も続いてる
終始笑顔の恋人に笑みを返しながら、栄口は何だか泣きそうになった。
end.
HAPPY BIRTHDAY!!!
栄口君は部員にも家族にも愛されていて欲しい…そして何があっても私は水栄が好きだよ!!!!
と思っていたらこんな事になってしまいました…。
最後まで意味の分からない駄文ですが、栄口君への愛だけはわかってもらえると嬉しいです^^;
1日遅れごめんなー!!
本当におめでとう!!!
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