小噺
若葉風(阿三)
「ー三橋」
風に吹かれて青葉が揺れる。
その間から差し込む光の下、阿部の横では太陽に透けた綺麗な薄い茶髪が靡いていた。
ミーティングだけで終わる昼休み、そういう日は2人でこの場所へやって来るのが、気が付けば自然な事になっていた。
ふわふわと揺れる髪に、阿部はそっと手を添えた
「…あ、べくん??」
三橋は髪の毛と同じ色の瞳をゆっくりと開いた
「わりぃ、起こした」
ううん、と目を擦りながら答える三橋の頭には青々とした葉が飾られていて、阿部は少し笑いながら優しくその葉を取った。
「あべ、くん」
「なに」
「空、きれい」
照れ笑いを浮かべる三橋、そこに最初に出会った時の不安感はなかった。
「うん」
阿部も恐らくは三橋以外に見せることのない、ふわっとした笑みを浮かべて、一緒にその大空を見上げた。
2人はそれきり何を言うでもなく、吹く風に身を任せて、穏やかな午後を感じる。
繋ぐ言葉はいらなかった。
今この時を、自分の大好きな人と笑い合って一緒に過ごしている。
お互いに不器用で、わかりあうまでに長い時間が掛かった2人には、それだけのことが言葉では表現できないぐらい嬉しくて。
その込み上げる感情を穏やかに飲み込んで、午後は流れていく。
さわさわと、風が吹く。
風に吹かれて、青葉が揺れる。
これからもこんな日を、何回でも過ごしたいと思いながら、阿部はゆっくりと立ち上がった。
ー「じゃ、行くか」
「うん!!」
きっと同じ気持ちであろう三橋も、それに反応してガバッと起き上がった。
ー新緑の中、校舎に着くまでの短い道のりを、2人そっと手を繋いで、ゆっくりと歩いた。
end
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…短くてすみません。しかも全然誕生日じゃない……かろうじて甘甘目指しました。しかしぬるくなりましたね!!!
…とにかく、
Happy Birthday三橋!!
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