小噺
さよならモノクロームワールド(島迅)
寒い、寒い
見上げる空の色はー…
〈ーさよならモノクロームワールドー〉
ふーっと息を吐く。それがかすかに白くなって大気中に浮かび上がるのを見て、もう冬になってきたんだなぁと思う。
道行く人たちの服装は、いつの間にかモノトーン系が目立つようになっていた。
そういう自分も無意識に、ジャケットとマフラーという冬物仕様になっている。
寒い。
夏とはガラリと変わる、この張り詰めた空気が俺は嫌いだったりする。
一人で歩いてると尚更嫌いだ。
限りなく冷たい空気が容赦なく覆ってきて、自分だけをこの世界から追い出そうとするのだ。
そして俺だけがたった一人、モノクロの世界に立たされているような、そんな孤独で切ない気分になる。
前に山ちゃんにそう言ったら「何ソレー、慎吾がセンチメンタルー」とか言われた。
その時のくだらないやりとりは、俺を何だか無性に寂しい気分にさせたものだ。
そうか、みんなはそんな風に思わないんだな。
回想に耽りながら空を見上げる。
ーやっぱり景色はモノクロにしか見えない。
空は、青い。
わかってはいるのだけど、俺にはその青が青に見えない。
俺の中で色が欠けてる。白と黒以外見えない。
「ー慎吾さん?」
「お、迅か。びっくりした」
「慎吾さん全然気づかなくて、俺の方がびっくりしましたよ」
「あぁ、考え事してた。悪ぃ」
声に気がついて、後ろを見ると迅がいた。
全く気づかないとは、少し考えすぎたかもしれない。
「迅、1人で何してんの」
「今日はちょっと買いたいものがあったんで。そんで今帰りです」
「そっか」
迅の家は知ってる。自然と一緒に歩く形になった。
いつもだったら何かしら俺が話をふるんだけど、今日は何かそんな気分にはなれなくて、無言のまま人気のない道を歩いた。
こういう雰囲気だと後輩的には気まずいのかな。
そう思って隣を見ると、キョロキョロと辺りを見渡す迅がいた。
「ー何見てんの?」
「あ、いや何となく、景色を…」
「ね、迅はさ、」
「はい?」
「独りで歩いてると景色がモノクロに見えること、ない?」
ーあれ、俺何聞いてんだろ。山ちゃんにああ言われて以来、同意は得られないと悟って聞かなくなった質問を、何で今更迅に。
「んー、モノクロって白黒、ってことですよね?俺は逆、ですかね」
「逆?」
「はい。冬が近づくと空気がヒヤっとして、寒くてやなんですけど、外はすごく綺麗なんです。
銀杏とか紅葉とか、空とか。全部が澄んで見える気がするんです。だからオレ、結構一人で歩くの好きなんすけどー…って何か一人で色々喋っちゃってすみません」
「…いや。なんつーかお前はすごいな」
「え!!?な、そうですか!!?」
言われて驚く迅の顔は真っ赤だった。
すごく綺麗な真っ赤だった。
イチョウは黄色くて、モミジは赤く舞っていて、空は限りなく青かった。
俺にとって独りは寂しくて、切なくて、モノクロの世界でしかない。
なのに迅が見る世界は全く逆だと言う。
そしてそれは本当だ。迅といれば、俺は極彩色の世界を目にすることができる。
2人で眺めるこの世界はとても綺麗だった。
迅は凄い。同意してもらうよりも遥かに凄い事をコイツは簡単にやってのける。
迅は白と黒しか存在しない俺のキャンパスに、瞬時に色を添えるのだ。
できることなら、ずっと。
俺の色味のない春夏秋冬に、迅の色を添えてもらいたい。
一人で歩いても悲しくならないように。
吐いた息は白くて、空は青くて、銀杏は黄色で、紅葉は赤かった。
ーさよなら、モノクロームワールド
end.
…ひぎゃああああ何だこの恥ずかしい文章はっ…orzorzorz
でもいいんです、久し振りの島迅小噺なんで!!←
慎吾と迅は真逆の考えを持っている事が多いと思うんです。
慎吾がネガティブなことは迅がポジティブ。
逆もまた然り。
まだくっついてない感じの話にしてみました。駄文すみません!!
でもでも読んで下さった方、ありがとうございました!!
2008、11/11 葎
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