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僕だけ見つめて囁いて?
矛盾する想い



「別に、ニヤけてねぇよ。苦笑だ、苦笑。」

「先輩のは苦笑に見えませんよ。」

「…意味わかんねー…。」

「分かんなくてもいいっすけどねー。」


そう言って俺の隣に座る藤原。


「お前、先輩たちと呑まないのか?」

「あー、いいんです。先輩、彼女の愚痴しか吐いてませんし…それに、」


藤原が俺に顔を寄せ、微笑みながら囁いた。


「俺は、三森さんと呑みたいんですよ。」


てへへ、と照れたように笑う藤原。


「きもっ…」

「ひでぇ!」

「え、何お前、ホモなの?」

「……違います。」


少し意地けた様子で酒を傾ける藤原に笑いが込み上げる。


「ぷっ、はは…冗談だよ、意地けんなって」

「…三森さんって、隠れS…?」



そんな風に2人で話していたら、俺の周りが少し暗くなった。


「…?」

「あ、西田さん。」


顔を上げると、惜しみ無いほどの笑顔を振り撒いている西田が俺を見つめていた。






「西田?何か用?」

「ちょっと来て。」


言うが早いか、西田は俺の手を引いて足早に店から出た。


「ちょ、西田!何処行くんだよ?」

「カズん家。」

「何でだよ、飲み会は?」

「先輩には抜けるって言ったよ。」

「っ、待てよ!」


西田の手を振り払う。


「カズ?」

「お前、言いたいことがあるんなら今言えよ。何でわざわざ連れ出すんだよ。」


少し息が切れた。

足の長さが恨めしい。



「カズが、笑ったから…。」

「はぁ?そりゃ笑う時には笑うだろうが。」

「そうだけど…。」



途端、シュンと項垂れる西田。


ったく、コイツは…独占欲丸出しの癖に俺に気を使っているのか、変なところで遠慮しやがって…かと思ったら今みたいに強引になりやがる…。



「カズは、人前であんまり笑わないから…カズがアイツに笑いかけてるのが嫌で…それで…」


段々と語尾が小さくなっていく西田。




あー…もう、




俺は目の前にある西田の頭を少し背伸びをして撫でてやった。




「っ…カズ?」


垂れ下がった眉で上目使いに俺を見つめる西田。




なんつー顔してんだ…



「黙って撫でられてろ。」



固められた髪をぐしゃぐしゃとかき回す。



「カズ?…ちょ、ぐしゃぐしゃになるって…」

「してんだよ、バーカ。」


あ、白髪みっけ…。




「…カズ」

「あ…?」



撫でていた手は西田に掴まれて、そのままヤツの唇に導かれた。




[*フイッ][ジーッ#]

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あきゅろす。
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