スマザー シカク
「結婚するんだって?ヨシノと」
「あぁ、まぁな」
シカクに会って、第一声に出た言葉。それはさらりと肯定された。あっさりしてるのは相変わらず
「やっぱ、どんだけ軽い女と遊ぼうが結婚となるとしっかりした女を選ぶのね。男って」
「遠回しな嫌味だな」
「どこが。寧ろこれはほめてあげてんの。変な女にかかる奴じゃないとは思ってたけど、ヨシノは上玉だし。アンタには勿体なさすぎるぐらい」
ひらひらと手を振ると面倒くさそうに眉を潜めるシカク。私はどこかの酔っぱらいかって話だ
(ダルい。ってかしんどい)
その場にあった長椅子に腰かけて煙草をふかす。奥にまで煙を運ばすことはしない。本当にふかしてるだけ
「俺にもくれ」
横に座ったシカクに一本与えて火をつけてやる。コイツは肺にまでキチンと煙を到達させる。あまり吸わない割りに
「おめぇはしねぇのか。結婚」
「それ、アンタに聞かれるとは思わなかった」
煙を空に吐き出し目を閉じる。こんな現実的な話を私たちはあまりしない。いつも気分が滅入る。コイツとそういう類を話すのは
「まぁ、俺がそうならお前もそういう歳になっちまったってことだ」
「私はしないよ。でも欲を言えば子供は欲しいかな」
「なんだそりゃ。矛盾だらけじゃねーか」
「だーから結婚しないって言ってんでしょ。大体相手を残して死ぬだの何だのとウジウジすんのが性に合わないのよ。それに私には一族とか、そんなのもないし」
独り身が私には一番向いている。それは感覚的に分かっていた。今まで
「お前っていやぁ、そうなんのが自然かもな」
「はは。自然、ね」
そうなったのは、きっとアンタが結婚するからよ
スマザー
(君の隣にいると)
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