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微笑む君 シカマル



ちらりと覗くときは、そう。彼が真剣な瞳をしている瞬間に尽きる。それがとても、もう絶えられないほどに


(決まってる、んだよなぁ…ほんと)


アカデミーの頃はそうでもなかった。寧ろ、目立たないところにいた。ただ、マイペースに過ごしていた頃を経て、大人になった彼は所有する能力を惜しげもなく発揮し、評価されるようになってからは周囲が放っておかなくなった


「サスケくんの方がいいわよ」


あのちんちくりんのどこが、と吐き捨てるは彼と同班の山中いの。それは、幼なじみ故の発言であろうが、その他大勢にとってはそれは近しい者だからこその発言であり、何ら影響力はない。確かに、それは正しいのかもしれないが、いざ彼を目の前にするとどうにも抗いようのない魅力に誘惑されてしまうのだ。その瞳の先を共有してみたいと、思わせるほどに鋭くも掴み所のない視線を受けては


(その特別を望んで止まない心は踊る)


「…まぁ、そう、ね」


いのは一途だ。素直で、度胸もある。嫌なものは嫌と言える彼女は、好きなものを好きと言える。羨ましいような、もの悲しいような、なんとも言えない感情を湧かせるものの言うことはない。私は私でしかあれないという証明だ


「そうね、じゃなくて名前はどう思うのよ」


「どう、って…、支障を来す訳でもないなら放っておけば…そういうのはシカマルの問題だろうし」


「あの馬鹿はなんていうか、こう、びしっと断らないのよ!ばしっと二度と来んなー、って言えないのかしらね」


「そんな横暴な」


「実際問題、あーゆーのを放置してるのを見てるのは不愉快なのよねぇ」


任務帰り、報告も終わり自宅への帰路へついた時に目にしたのは商店街を歩くシカマルとそれについて回る数人の女の子達。同期の彼をぼんやりと眺めていると後ろから声をかけてきたのがいの、という訳なのだが、立ち話にまんまと付き合わされることとなって現在


(別に、同調しかねるわけでもない、が)


「どうせ追うなら、とは思うけどねぇ」


「、どういうこと?」


「あー…、私は任務中のシカマルの眼が、こう、いいと思うから。今のシカマルを追っても、ねぇ?」


「…あんた、部分的にシカマルのこと気に入ってたのね」


前からなーんか変だとは思ってたけど!と何故か少し怒っているいのは盛大なため息を吐いてから理解できない、と呟いた。それは、なんとも申し訳なくさせる


「どちらかといえば本質的に」


「なにそれ」


理解できない、というように眉を潜めたいのは腕を組んで髪を揺らめかせる。その揺らぎに惚けていると、いのがあ、と声をあげた


「よぉ。ちょっといいか」


「いいわよ。連れてって」


私が一言も話さない内に腕を掴まれしっしっと払いのけるように手を動かすいのから離されていく。彼女は厄介なものを押し付けたような笑みと、後日談を乞うような瞳を向けていたが、引っ張られていけばそれも見えなくなった


「悪い。これからこいつと次の任務の話があるんで」


勢いそのまま、女の子達の間も抜けて商店街を進むから視界は目まぐるしく変化する。んー、どうして私がチョイスされたのかもよく分からないし帰る方向とは逆なのだけれども


「シカマル。次の任務なんてあったっけ」


「ねーよ」


(あ、苛立っている)


「いのが言うように、はっきり拒否してあげるのもありかと」


「キリがねぇ」


「そう。よく分かんないねぇ」


「…お前だって、」


「そんなことは」


ただ、一瞬の鋭い瞳を好んでいる。そして、それを共有するためには同じ任務につくが早い。けれど、その瞳を私に向けて欲しいと願ってしまったらば。それはもう


(どちらにせよ、それらはあなたにつきまとって充たされるような欲望ではないだけなのでは)


「報われねぇにも程がある」


自嘲気味に、渇いた笑いと共に発せられた言葉は誰に向けられたもの?まぁ、そんなことは微塵も興味がない


「まぁ、細かいことは気にしなさんな」


「もう黙れ」









微笑む君
(苛立つ俺)






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