慕情 サスケ
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あの日、あの夕焼け。自分でもくさいってことは理解していた、けれど確かに感じたこの気持ちに名前があるとするならそれは
慕情
馬鹿面。身嗜みも馬鹿。発言も馬鹿。当然、頭も馬鹿。でかい口を叩いたかと思えばすぐに鼻をへし折られる…癖に相変わらず大口をたたいて叱られる馬鹿。聞けば、両親が居ないらしい。誰にも構ってもらえないのが寂しい馬鹿は、それを隠すことにおいてはそれなりに才能があるらしい。馬鹿は馬鹿なりに馬鹿になったようだ
「お前知ってっか?」
「…あ?」
「空がこんなに蒼いのは、俺たちの涙を吸い取ってるからなんだってばよ」
「はぁ?」
「で、で、雨がしょっぱくないのは空が悲しいもんだけ吸い取るからなんだ!」
「…話になんねえ」
論理的に打ち負かすことは簡単だったが、その気力すら起こらなかった。馬鹿が、あまりにも得意気に
(あまりにも真っ直ぐな眼をするから)
「んなこと分かってるってばよ。ただ、もしそうなら泣くことに抵抗なんてなくなるし、そしたらきっともっと色んな奴が楽になるんだ」
あぁ、なんていうんだっけ。こういうの
「…」
「なんて、お前に言っても仕方ねっか!」
(あぁ、なんていうんだっけ。こういうの)
「お前と俺は違うんだよ」
「サスケ、」
「俺は涙を流さない。俺に悲しいなんて感情はもうねーよ」
口だけが勝手に喋る。隙間を見つけるようなことをしても意味は無いと知っているのに。解っているのに。これが、夢だってことも、全部
「…夕焼けは空が赤くなるだろ?あれもそうなんだってば。お前の、血の涙」
気付いてねぇの?と酷く哀しそうに俺を指差したナルトの背景の空が赤く染まる。俺は自分の頬を流れる血に気付かないフリも出来ず、に
「全部、吸い取ってくれたら」
(俺たち、きっと)
ナルトは笑っていた。俺は泣いていた。ただ、それだけの夢に締め付けられる胸は痛いというより、ほら、なんていうのか
なんていうか
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