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そこには君だけ カカシ


ふとした瞬間、そこに誰かが居たことに気付く。その瞬間が訪れるのは、決まっていつも失った後で、まぁ、ただそれだけ








そこには君だけ
















もう何日の間眠っていないのだろう。そんなことが頭を過って数を勘定し出すけど、どうやら脳に充分な栄養がいってないらしい。そういえば、ここ何日もロクに食物を摂取していなかった。何かを数えるには糖分が足りない、と


「……」


刀一つ手に、じっと目の前を見据える。辺りは木々が茂る森。岩の上に座り、じっと、気配を絶つ。けれどそれに信念などない。私はもうここから動く気力がないだけだ。どうせ、どこに行っても敵は現れ、そして殺し合いは終わらない。誰だっけ。こんな戦いを始めたのは。あぁ、まぁ、いいや。考える気力がない。私が所属する小隊の任務はここで敵を足止めし自領域への侵入を阻止すること、だった。けど、私以外の味方はもうとっくに死んでそこらに転がったままだし、敵はいくらなぎはらえどまた現れるし。あぁ、まぁ、そんなのは別に大したことじゃないしいいか


(身体は敵を前に勝手に動く)


「…それだけで充分」


極めて至近に投げつけられたクナイを避け、刀を構える。頭の中は空っぽだ。考えを張り巡らせるその一瞬で死ぬのがこの戦争。なら本能で感じろ。身体に全てを任せ、呼吸と一撃を合わせろ。そして、また、


「甘いもんが食べたいねぇ」


敵をなぎはらい、ふとそんなことを呟いてから自分の身体が横たわっていることに気が付く。どうやら、ここらが限界らしい。もう、立つ力がない。やけに血生臭さが目立つ場所の中心で、見上げた空は心なしか赤くて


(もう疲れた、し)


「なにやってんのヨ、馬鹿」


「………うっさいバカカシ」


「もうちょっとしたら、甘いもん死ぬ程食べさせてやるヨ」


「ちぇ。イヂワル」


こんな時に、私を抱えに現れたのは白い、小さな味方。まぁ、なんでもいいんだけどね。いいんだけど


「カカシ、そこの刀も一緒に持って行ってね」


闘えって、五月蝿い白は、そう、まぁ、嫌いじゃないから、だから、もう少しだけ糖分は控える、かな


「ふん、」


素直に笑わない、不器用なお馬鹿ちゃんは私を迎えにきたらしい


そして、私はそれが嬉しい、らしい







(あぁ、まぁ、どうでもいいんだけど、なんか、ほら、あれがあれであれだから)


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あきゅろす。
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