ほら、
怖かった
例えば、そう。君が向ける視線1つ。何も言わずに脱ぎ捨てられた衣服。おかえり、と言えもしない自分。他にも、数えきれないほど、沢山。ささやかなことだ、と言った君のいた場所に、暫く立ち尽くすのは酷く苦痛で哀しく
(あぁ、なんていうんだっけ。こういうの)
得体の知れない気持ち、に言葉を。君が口づけで愛をくれたように、言葉を、この気持ちに
「なんていうんだ…ほら、」
思い出そうとするみたいに頭を抱えてみて、目を閉じる。それはまるで初めて君を見上げた時みたいな、右手を掴んだ瞬間の、あの感じみたいな、みたいな
(どうして)
きみはしんだの、と問う。するとぶわっと溢れる気持ち、みたいな。それはなに。怖かったのは過去で、あぁ、違う。過去の気持ちですら本当じゃなかった。でも、今のもそれとは違う。あれ、こういうのって、本当になんて言うんだっけ。なんて、気持ち?
「愛してる、よ」
違う。だけど私はそう告げて彼の墓に花を添えた
ほら、
(なんていうんだっけ、こういう、なんか、ぎゅっとするこの、)
旦那さまが忍だったら
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