痛み分け カカシ 身を削るように絞り出した言葉が私の全てを欲している。そんな錯覚を愛しく思うだけの私を、一体どこの誰が見向きするのだろう 「カカシ先輩」 「んー?」 「いつか、なんですけど」 「うん」 「ゲリラ的に後ろからその背中に飛び乗ってもいいですか」 「……」 「すいません冗談です」 これでもかってぐらいに冷たい横目で見られてすかさず謝る。実際は半分本気、だったり (その背中は、どこか物寂しくて) 「…まぁ、俺も似たようなもんかな」 「はい?」 「そういうの、分かる」 「…うそだぁ」 そんなの有り得ない。だって私、あなたより寂しげで可哀想な背中を見たことがないもの。本当に嘘つきな人 「ま、お前には分かんないよ」 「あ、また私を子供扱いしてますね?」 「そんなのしてないよ。ただ、」 先輩はそこで言葉を止めて私を見た。何度もぶつかったことのある視線の筈なのに、嫌に緊張する 「お前が困ると思ってネ」 ま、もういいんだけど。と先輩が私を真っ正面から抱き締めた。いきなりのことに私の身体は固まる 「…え」 「俺も分かるんだよ」 「な、なにを」 「誰かを抱き締めてあげたくなる気持ち?」 少し茶化した言い方はこの私の身を滅ぼしきってしまいそうだ。そんな、痛みに似合わない温い体温に涙が出そうになったけれど、結局は引っ込んでいった 痛み分け (より孤独になることを知っていて)(それでもあなたは私に触れるのですね) ←→ [戻る] |