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ありがとう サスケ


わざとらしくはぁ、と息を吐けばそれは白に染まってやがて消えた。年末にも関係なく入ってくる任務を終えて里に帰ってきたのが夜の11時過ぎ。そこからなんとなく待機室に行ったら安いお酒で悪酔いするアスマさんと紅さんに会った。それに巻き込まれているカカシさんが助けて、と言わんばかりにこちらを見てきたが無視。お疲れ様です、と今年もよろしくお願いしますというと三人は時計を見て年を越したのを理解した。私は何とも味気ない年越しをしたな、と思いつつそれも自分らしいと思いでは、と待機室を出た。もちろん、明日のお年玉を楽しみにしてますね、と言うのを忘れずに


(あ、雪)


寒くて暗い里の中では分かりにくい初雪。月明かりに照らされ光るそれは綺麗で、思わず空を仰ぐ


「さて、と」


このまま1人で過ごすのもそれはそれでいいものなのだが、私には一緒に過ごす約束をした男の子がいる。正確に言えば無理に約束を取り付けただけなのだが。それも今年で三年目


「アイスでも買ってくか」


寒い中、コタツでぬくぬくしながらアイス食べるのもいい。あの子はそういうの好きなのだろうか。そうでなくともそうさせてやるだけの話だけど


静けさの中歩いてたどり着いた家の明かりは案の定ついていた。随分待たせてしまった、と罪悪感に胸を痛めつつも律儀なあの子の家のドアを無断で捻りそろりと部屋に入った。言った通りに開けられていた鍵を閉めて


(あれ…やけに静かだな)


「サスケくー……ん?」


不審に思い声を出して呼ぶとそこにゴロリと寝転ぶ目当ての男の子が見えた。近付いて顔を覗くと穏やかであどけない寝顔。やっぱり来るのが遅すぎたか、と苦笑しつつ私は彼をそのままに台所に向かった。これまた言った通りに雑煮の材料を買い揃えている冷蔵庫の中身を取り出して雑煮を作る。アイスは冷凍庫に入れた


まるで弟のようだ、と感じ始めるまでそう時間はかからなかった。三年前の年末の夜に1人で寒空の下、買い物帰りらしくぼんやりと空を見上げ歩いていたサスケを見てドキリとしたのを今でも明晰かつ判明に覚えている。イタチに似ている、と思うと跳ねた心臓


(サスケに言ったら怒るだろうな)


でも確かに私はサスケにイタチの面影を重ねていた。だからその夜私はサスケに声を掛けた。無理矢理に引っ張り回して夜が明けるまで開いてた居酒屋で過ごした。鬱陶しそうな顔をしていたサスケも今ではなんやかんやで私を受け入れてくれている。そして私も今はサスケをサスケとして感じている


「…来てたのか、名前」


「あ、起きたのー?ごめんね、任務が遅くなっちゃってさぁ」


トントン、と定期的に包丁を振り落とす私の後ろに立つサスケを見ずに応える。何故か暫くしてもサスケが去る様子がなくて振り向くと彼は真っ直ぐに私を見上げていた


「どうしたの」


「……腹減った」


あらやだ。この子ってばやけに素直で可愛いんですけど


「夕飯食べなかったの?」


「お前が来るっつたから食わなかったんだろーが」


「あはは、は……そうでした。急いで作らせて頂きますよー」


また手元に集中し出すとスッと戻るサスケが去り際にポツリと呟いた言葉を、私は気付かぬ振りして噛み締めた。溢れてしまう笑みも、今は誰にも見えまい










ありがとう
(それを言うなら、明けましておめでとうなのに)
(私も君にそう言いたいんだから仕方ない)








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