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それなりに シカマル



冷たさが好き。ひんやりしてて、気持ちがよくて。何より私の体温でやがて温かくなるその変化に彼を手に入れたような、そんな錯覚を覚えてしまう瞬間が好き。時に猟奇的になる私にも彼は理解を示し、溜め息をついてはいるもののその侵食を止めようとはしない


「冷たい…」


ぎゅうう、ともっともらしい力で彼を、シカマルを抱き締める。本を読んでいる彼は私を疎ましそうに溜め息をついた。それが拒絶だとしたら私は1日に何度彼を嫌な気持ちへと誘っていることか


「お前も大概冷てぇ方だと思うぜ」


「あー…よく言われる」


けどシカマルの方が冷たいよね、と囁くと何故か彼は悪かったな、と言って本を閉じた。そのまま振り返って私を自分の胸の中におさめるとまた本を開く


「冷たい冷たい」


もう服が冷たいのかシカマルが冷たいのかよく分からなくなってきた。けどまぁ、それが気持ちいい訳で。まるで雪で遊ぶ子供のように騒ぐ私を彼は制す訳でもなく受け止める。少し笑って


「なんか腹減ったな」


「どっか食べに行く?」


「そこは何か作ろうか?だろ…ここお前ん家だし」


「あーあーめんどくせーなー」


「お前なぁ…愛が足んねぇよ」


「貴重な時間に本ばっか相手にしてる男には言われたくない」


(大体シカマルの口から愛って)


トン、とシカマルの胸に頭を置いて目を閉じる。じわじわと温かくなってきた彼の身体が規則正しく行う呼吸と拍動の音が酷く安心する。なんて気持ちのいい人だろう


「……名前」


呆れたような、でもどこか優しくて温かい声で名前を呼ばれて私は顔を上げた。そしたらシカマルの微笑がそこにあったから私は身体の動きを止めた。きっと無意識なんだろうな、この顔を私が好きなことを知ってる筈がない。そしてそのまま落ちてくるキス


「、っ」


なんてことしてくれるんだ!と怒鳴りそうになった。あまりにも反則すぎて。これも惚れた弱味なんだとは思いつつ、でもやっぱりすることがむかつくほど格好よくて、私を動けなくする


「ほら、言うことは」


長めのキスが終わってシカマルが勝ち誇ったように笑った。熱い、あつい


「…何か作りましょうか」


ちくしょう。でも、私は構ってもらっちゃったし、今度はシカマルを私が構わなくちゃ


「何でもいい、つーかもう決まってんだろ?」


「うん。だって冷蔵庫に入ってるもん限られてるし」


ただ離れるのが惜しくなって今度は私からシカマルに触れるだけのキスをして離れた。台所へ向かうと何故か後ろから彼がついてくる


「…なんか、お前って」


「なに」


「ずるいよな」


なにが?と思いながらも私は後ろから抱きついてくる彼を抱えて冷蔵庫を開けた









それなりに
(冷たい手も身体も)
(私に触れて熱くなる)





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あきゅろす。
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