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泣き虫 カカシ


そこに行ったのは、そこに行くしか無かったから。ただそれだけの事だ。着いてから泣こうが、馬鹿な奴だと笑ってやろうが、それは私の勝手。何も考えてやしなかった。それぐらい、この戦争は長く感じられる


戦争。それは血が流れなくなったからといって終わるものでなく、里が修復されたから終わるものでもない。自己の中で延々と続かせる者が居れば、終わらせる者もいる


弟の名が刻まれた石碑の前に来たのは、私がどちらであるのかを確かめる為。殉職し、遺体も帰って来なかった弟は戦いの最中で写輪眼を開眼させたと聞いた。そしてそれを受け継いだ者がいる、とも


それは、あの子だろうか


「君、はたけカカシくん?」


少し遠くから声をかけるとその子はゆっくりと振り返って、じっと私を見た。その左目は額当てに隠されていて見えない。確実にこの子だという確信


「うちは名前、うちはオビトの姉です」


やはり、というように頭を下げた男の子の前を横切り石碑の前にしゃがみこむ。そこには確かに我が弟の名が刻まれていた。それをなぞる度、じわじわと溢れ出てくる感情が何なのか分からない。ただ、泣くまいと思った


「…名前さん。オビトは、俺の隊で…俺のミスで」


顔を見ずとも泣いているのは分かる。ただ、それはどうでも良くて。だってオビトが死んだ要因など今更知ってどうなる?どうにもなりはしない


それよりも


「カカシくん。その左目、オビトの眼なんだよね」


「はい…」


「見せて、くれるかな」


立ち上がって振り向けば、その子はゆっくりと額当てを外した。そこに見える、真っ赤な朱い写輪眼。私はそれを私の写輪眼でもって見る


そこにオビトのチャクラは感じられない。純粋に写輪眼の力だけが上手く宿っているようだ。この、はたけカカシに


「しっかりやりな、オビト…良い眼を持ったんだから。カカシくんと一緒に、頑張るんだよ」


何度も頬を撫で、泣き出しそうな左目の代わりに私が泣いた。こうなると分かっていても、泣くまいと決めても駄目らしい。だって私とオビトは姉弟だから











泣き虫
(私だけが延々と)





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