この苦しみを カカシ
戦争で生き残ったのは、私の場合偶然に等しかった。同期で飛び級はするわ、私が卒業する前に中忍になるわの彼が助けてくれなければ
死んでいたであろうこの命
「……」
今の私は声が出ない。喉をやられた訳でもないのに、可笑しなことだ。戦争の経験が精神に大きな影響を与えているらしい。だから今は暗号の解析をする裏方に回った。それが私の能力に驚くほどピッタリな仕事で
貢献している、一般的にはそうみられている。だがそれが私の精神に何か変化をもたらす訳でもなく、声が再び出る訳でもない
声を取り戻したいか。それは微妙な問いだ。イエスかノーかで答えるのなら、イエス
(時の運ってヤツかね…)
曇り空の下をゆらゆら歩く。戦死した仲間たちの名が刻まれた石碑につくと、案の定先客がいた
カ カ シ
近くまで寄るとこっちに視線を向けた彼に口をパクパクさせる。それで会話が出来る
「今日、雨降るよ」
そ う
「じゃ、そろそろ行こうかな。子供たちを待たしててね」
な ら 毎 朝 来 る の や め な さ い よ
「それを言うなら君も、デショ」
私 は 誰 も 待 た せ て な い か ら 。 仕 事 は 1 人 で や っ て る も の
「あ、そう…」
特に話す事はお互いに無い。ただ二人とも毎朝ここに来るのを止めないだけ。人間味のある時間は可笑しな空気で包まれる
早 く 行 け ば ?
「ん、あぁ。じゃ」
瞬身で消えたカカシの跡に雨がポツリと落ちる。こんな時、酷く声を欲する。一言でいいから、私はカカシにこう言うの
『助けたのは、道連れでしょう』
この苦しみを
(分け合えるとでも思ったのね)
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