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狭間の崖下 キバ


毎日が鮮やかな景色の中にあったのならば。そうしたら私の手には何かが残るのかもしれないけど


残念。日常にはその思考が入る隙間すらない


それを証明する痛み。右足に刺さったクナイが多分筋肉にまで到達している。お陰様で崖の下でこうして動けないまま、何と2日を過ごしている


「んだよ…バカヤロー…」


大の字で寝転がり、助けに来る気配のない上を見る。そこではただ雲が流れている。最悪のパターンか、これは


(考えたくないけど、死ぬな。これは)


一度こうして忍が行方不明になると、まぁ大抵は死んでる訳で。こうして2日も経って見つからない場合は当然捜査は打ち切り。後は偶然に死体を見つけられ、額当てからどこの忍かを割り出すだけ


私はそれで死体を2体見つけた事がある。はは


「って、笑い事じゃないから。自分」


こうなるならせめて。私は言いたいよ。アンタが好きだと、そう言いたい人がいる


くそう。この人生、一度はまともな恋をしたかったよ。忍だって、それは許されるでしょうが


「……助けて、キバ」


思わず呼べばそれがスイッチになって涙。脆い、こんなに涙腺が脆いなんて悔しくてまた涙


「おい!大丈夫かっ」


更には幻聴が聞こえる始末で。こんなにもまだ生きてたいと思った日はない


「名前!無視すんなよ、テメェ!」


やけにリアルなエコーに目を開ける。確かに崖の上にはキバ。これは、どういう事だか


「っ大丈夫な訳、あるか」


声を出すとササッと赤丸に乗ったキバは私の所まで降りてきて。動かない私を抱き上げたりするその手に現実を見たりする殺那的体感


「情けねー奴」


「キバ」


「あ?」


「…腹減った」






狭間の崖下
(っじゃない!好きだよ)
(は、はぁ!?頭打ってんじゃねぇ!)


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あきゅろす。
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