08 懐かしくて
あれから幾年も経ち、私は緩やかな思い出を心の奥に追いやった。そんな頃だった。木ノ葉崩しが起きたのは
「お前はここにいろ。全て終われば迎えにくる」
「……」
無言のままの私を置いて今日もイタチさんは“暁”の任務に出掛ける。今日は、木ノ葉が近い。その状況で嫌でも頭に出てくる少年がいる。幼い頃で止まった記憶の中の少年が今の私を見ればどんな反応をするのだろう。あの夜に生き残りが居たなんてだけで驚きは隠せない筈だ。それが私だと知ったら、イタチさんと一緒に居ると知ったなら
(…きっと、ううん。間違いなく私を殺したくなる)
だって私はイタチさんについていってる。今だって逃げ出そうと思えば逃げられるのに。木ノ葉は近い
「……」
でも、そんなことに意味はない。私はあの時既に裏切っていたも同然だ。イタチさんがそうするんだって分かってて、一族の皆に何も言わなかった
(ただ、私は死を選んだ筈だった。それだけのことが、)
「ナマエ」
俯いていた私の前にイタチさんが現れる。私は、無意識に口を開いていた
「何をしていたんですか」
ピクリとイタチさんの眉が揺れる。絶対に聞いてはいけない事だったのだと分かり、私はすぐに引き下がる
「何故、今日に限って聞く」
「いえ…イタチさんがチャクラを乱しているなんて、よっぽどの相手だったのかと」
「よっぽどと言えばそうでしたよ。なんせ相手はあの伝説の三忍の自来也でしたからね」
口を挟むキサメは更にこう続けた
「あぁ、それと写輪眼も使いすぎましたからね。弟さんに」
自分が地雷を踏んだとも知らずに話し続ける男を睨むイタチさんが、霞んで見えた
「…サスケ……」
懐かしくて
(聞こえないように何度も呼んだ)
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