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10 綴じられた歴史



音がする。重く沈む身体は気軽には起きないが、視線だけは向けられるので憂鬱だが窓に瞳の焦点を合わせる


(あ、れ。また夢…)


意識が濁る中であっても窓が開かれると、風が緩やかに部屋に流れ込むのを感じて現実らしいことを理解する。少し肌寒いそれが眠りから意識を剥がしていくと、窓枠に腰掛ける人物が誰であるかを判別できた


「ここまでする意味があなたにあるようには見えないんスけどね」


「…あなたこそ。ここまで興味があるよ、には思えませんでした」


呂律が上手く回らない。まだ貧血の症状がきつく、視界は滲み目眩から吐き気もある。そんな中でも、この状況での彼の真意は即座に理解出来た


(ダルイさんは、自里の結界以外はしょうがないと割り切ったのかな…いや、雷影がそう判断しただけか)


「木ノ葉はあなたを飼い殺すだけだ」


「知っています」


「怒ってますか」


「いえ。少しも」


ただ、知っているだけです。再度そう告げるとダルイさんはそれ以上私に近づくことをやめた


「戦争にはしたくない」


ああ、なぜだか、事情も知らないのを加味しても


「戦争が終わってるとでも?」


貴方には言われたくなかったな。この里の人間みたいな、上辺をなぞるようなそれらは聞き飽きて虚しいだけだから


「どうだろうが、俺は貴方をこの里から攫います」


恨み言はいくらでも、そう囁きながらダルイさんは両腕を私の背に回す。まだ痛み軋む身体を無理に起こされ漏れる息が落ち着くまで、厚みのある胸にもたれ呼吸を浅くする間、彼は微動だにせずただ私を見下ろして


「…どうせなら、記憶すら消してください」


(道具として働くのも疲れるから。お願いだから)


「あなたが真に望むなら」


ふわりと、大きな手のひらで視界は閉じられる。どんな意図があるのかは知る由もないが、結局、この男も私を傷つけていく。過ぎ去るまま、知らぬがよかったと、私もまた死にゆく道を進んだ







(木ノ葉には、いずれ戻ってくる。生きていても、死んでいても)




あきゅろす。
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