05 消えた
『だから、アナタなんか嫌いよ』
それが繰り返し聞こえてくる。そう言ったナマエの瞳は紅く、そして泣いているみたいに見えた
(俺が、あんな瞳にさせたのか?)
ふと目を覚まして起き上がる。左肩に痛みが走って、それで思い出した
「う、そだろ……」
『愚かなる弟よ。憎め、そして』
「っ!」
走る。記憶が嘘であるように、痛みが嘘であるように。俺の兄さんは、あんな事をする人じゃ
『器をはかり損ね、俺の気が長いと思い込んだからこうなったんだ』
「っるさい…!」
バーケードを越えて一族の敷地内に入る。家の中には誰も居ない。ただ残されていたのは血の跡。そこには昨日父さんと母さんが倒れていた
(そうか、そういうことだったのか)
「やっと分かったよ…兄さん」
俺もアンタの器をはかり損ねてたってことに
「やっと…分かった」
泣いてた。あの時確かにナマエは泣いてたんだ
イタチ、アンタのために
消えた
(何もかも、アンタのために)
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