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07 束縛



痛みと不安は似ている














束縛














空の色が紫煙に霞んだように、ぼやける。夕とも夜ともとれないこの時間が、私は好きだ。うつらうつらとする意識が境界を曖昧にして、夢を見せようとする


「ナマエ、」


ぽん、と私の頭の上に手を置いたのは兄で、目を開き首を左右に振ると彼は少し笑って将棋盤を指差した


「やろーぜ」


どこか悪戯を楽しむようにニカッとシカマルが笑う時は、決まって私が怒っているときだ。女はめんどくせぇだの何だのとごねる癖に、本当に稀に私の機嫌をとろうとすることがある


(それが、とても)


「ん、やる」


くすぐったく、心地良くもあるから私の感覚は麻痺する


(明日、彼は中忍試験の最終試験を受ける)


対戦相手は砂の里のテマリ、という女だということは知っている。相手が女性ということは、フェミニストのシカマルはやりにくくなるだろう。それが敗因になるとまでは思わないが、私は明日に期待も、存亡も、望んではいない。見方次第ではこの感情は失望に近いのかもしれない


なぜだろう


「…」


言葉が出ない。これは頭がフル回転し、尚且つ急速に落ちていく矛盾を孕む。脈が隆々と打ち続く、その間を埋めるのは呼吸か、あるいは


「やっぱり、アスマよかお前の方が断絶強いぜ」


「だって私、」


(奈良家の、人間、だから)


言葉にできないことは、恐らく、全ての人間が持っている。そうして呑み込むよりほかにないことを、人は平然とは抱えられない。それが、不安の一側面として横たわっている様を見かねてしまうから


「…だって私、頭いいもんね」


言葉に隠した、本当の意味を探して。何も考えずに、私だけを見て?泡が、私を囲み尽くして消してしまう日が来るならそれでもいいと笑って


「ナマエ?」






(なんて言えず、私は醜くまた笑うのだ)





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