02 夕立
(※誰の続き)
この世界じゃ人が死ぬのは稀じゃない。じゃあ、戦わなければ死なないのか?
(それは違う)
この世界は根本的に前の世界とは違う。戦いは常で、身近で、人は身に余るのではと思う程の力を手に入れることが出来る。人は人でありながら武器になる。凶器になる。そうして自らの手で守ることができ、同時に奪うことができる。戦いの中で、命を賭けに
「お前たちは何故戦う?」
アカデミーで学ぶのは忍術や体術だけではない。忍としての精神論、も戦うにあたっては重要だ。今はまさにその授業の最中。担任の先生の問いにみんなはどんな返答を思い浮かべたのだろうか。みな、無言で何も喋らない
「ナマエ、お前はどう思う」
きょろきょろし過ぎたのが目立ったのか担任は私を指名した。みんなの目が一斉にこちらに向く
「…現時点で国の権力の象徴は忍であり忍里の優劣は国の優劣そのものです。それ故に忍は優劣関係を維持、あるいは破壊するために武器を得、力を得ます。国の優は生活の豊さを象徴し、国の劣は人々の荒みを象徴します。木ノ葉は優の里です。この生活を維持するために戦う…人々の今を守るため、私は戦います」
そう言うと担任の先生は模範解答だと褒めた。それが忍の心得であると説いた。みんなはそれに頷いた
(求められたものを抽出し吐き出すのは簡単)
じゃあ劣の里は、国はどうなる。全世界の人々の幸せは?考えるだけ無駄と言うのは簡単だ。嘘を吐くことよりもずっと
夕立
帰り道、雨が降る。びしょびしょのまま、曇り空を見てふと思う
(きっと、シカマルはこんな空嫌いだろうなぁ)
帰り道、夕立が止む。晴れた空をみてまた思う
(今頃、縁側で空をぼんやり眺めてるんだろう)
「ばーか」
本当に戦う理由は、例えば私の場合。こういうことが当たり前だと錯覚したくないだけ。ありふれた幸せなんてないってことを、戦って生きて知る。それだけ
(この世界は、やけに素直で気持ちいい)
くだらねぇ、って言うのかもしれない。想像すると少し面白い。私は案外、この世界を気に入っている
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