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06 多岐に渡り
※是うもなし 続き

しかしながら時はまた少し戻る


(焦りは禁物。終わりは存外近い)








多岐に渡り








「お前、うちは一族なんだろ」


純粋な思い付きだったのか、同じクラスの彼はそれに対して悪意はなさそうに問うてくる。この瞬間が、昔から一番嫌いだった



「お前もあのイタチみたいに凄い技できんだろ!」


やってみろよ、と言われたことも、イタチと比較されることもしょっちゅうだった。アカデミーでどれほど自分が頑張ったって、あいつには追いつけない


「ちょっとやめなよ」


面倒事は他所でやってくれと言わんばかりの女子の声にも慣れた。私は面倒事の一つで、うちは一族にとってもそう。中途半端な存在はただの邪魔ということなんだろう。知っている


「今は術を使っていい時間じゃないから…」


「ちえ、つまんねー」


つまらないのは私のせいなのだろうか。本当に?


「…本当は」


(言ってしまうな。それは内に秘めておくことで、誰かに聞かせるようなことではない)


「こんな自分、大嫌い」


泣きたかったのに体は咄嗟に殺気を纏わせた。それはとても不出来だったし自覚もあったけれど、アカデミーの一クラスを静かにさせるには十分でもあった。それに少し満足して、しかしすぐにやってしまったと分かった


あいつが来る


「なにをやっている」


本家で、同世代というだけでいつまでも不出来な私の付き添いを任されて、イタチはそれを忠実にこなしていた。アカデミーを卒業して中忍になっていたにも、関わらず出来るだけ帰りを共にして。そしてそれは今日も変わらない


「なにも、」


私はなにも悪くない


そう言おうとしても、周りの強ばった顔と解かれない緊張にそれは最後まで口から出てこなかった。何を言ったって、私がこの状況を創り出した事実だけは揺るがない


(それぐらいは分かる)


「…うちのがすまない。ナマエ」


駆けつけてきたのかは分からない。ただ、この場を収束させようとして私を連れて帰ることを選んだイタチの瞳は普段通りで


(虚しくなるほど、私の世界は狭い)


その瞳に押隠す全てを知らずとも、推し量ることも出来よう。それなのに、それでも、そうして


「帰るぞ」


私を見る。私を呼ぶ。皆が止まる。その容姿に。その雰囲気に。纏う見えぬなにかに


「…別に、もう迎えに来なくていいのに」


アカデミーから大分離れたところでやっと口を突いた言葉には愛嬌がない


「なら、二度とあんなことはするな」


「、あれは…!」


あんたと比べられて、私は写輪眼すら開眼していないのに、うちはにも、木ノ葉にも馴染めない半端な私は


「ナマエ、お前はどうなりたいんだ」


「、」


真っ直ぐ、見つめられると溢れそうだった劣情も怯む。ぽろぽろ、ぼろぼろ、外面がゆるゆると剥がされて









(その時、何も言えなかったことをここまで後悔することを知っていても、それでもやっぱり私は嘘をつけなかったろう)





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