01 震える指先
あまりに尊すぎて、畏怖の念を抱く程になっていた。いや、正確に言うのなら出会った時からそれは既に形成された感情だった。そんな感情が、ここ最近どうしようもなく強く苦しく私を締め付けてくる。そして、それに比例して時が迫ってくるのである
(もう、時間がない)
たった一つの信念。曲がることのない、ぶれない瞳の向ける先に地獄がある。そして、間もなくその地獄の中に私が埋もれるのだ
「どうして、」
死の恐怖に震えが止まらない。紛らわすように発した声は誰にも届かない
(ほら、今日も脚が重い)
任務を終え、報告を済ませば里の隅へ設けられた一族の住まう場所へと帰るしかない。けれど、それはいつもどこか惨めで、そしてどこか慣れることのない違和感。この里に我らが未来は無い、と嘆く一族の上役。賛同し、怒る瞳たち。あの朱が嫌いだ。あの激情に似た全てが私を拒む
“なぜお前は開眼せぬのか”
一族の中でも開眼率の高い家族と暮らす私はいつもそう言われた。落胆された。押しつぶされぬよう、負けぬよう、ただ前を見据えていた。これはそのツケなのだ。力を過信することのない私だからこそ見える、調和という木ノ葉の在り方。写輪眼越しでは決して見えぬ未来
「父上、」
家に帰り襖を開けるが誰も居ない。また、例の密談会議か。木ノ葉を乗っ取る算段をいくら立てても何も得られぬというのがどうして判らない…
(この里は、支配で成り立っている訳じゃない。独立した意志に基づく共同体を必然としている)
「あらナマエ、帰ってたの」
「お母さん、」
「お父さんが、あなたに会議に来るようにって」
遅れてもいいから伝えてくれと言われたの、と言う母はどこか物憂げで、だがそれは私の期待が見せた幻想だと言わんばかりに現実が迫っていた
震える指先
(頭の奥がぐらぐらと、絶望に揺れる)
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