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女に生まれた以上は


「流石に今回は私らだけでは上手くいかへん。千歳くん、名前。協力してもらうわよ」


急に集合〜、とチームの皆を呼び寄せた小春はひそひそと作戦を話す。流石俺の小春!と感心する一氏を他所に淡々と話す小春に千歳は笑い、名前は面倒だと言わんばかりに頷いた


「ほな」


「行くで」


「はん、お前らのネタは見慣れとるっちゅーねん!」


かくして、実質決勝と言えよう戦いが幕を開けた。小春の作戦としては、取り敢えずボールを2つとも手の内に得ることが前提であったが、相手が相手だけにそれは難しいと予想。そこで少々強引な手ではあるが誰かがボールを取りに行き、受け取れなくともボールを手にすることを目的とした囮を作ることにし、それを千歳としたのだが


「えい!」


女の子の小柄な身体と可愛い声で投げられた一球とは思えないほどの速さでボールが飛ぶ。それは丁度投げ合いがヒートアップし出した頃で、それ一球に気を取られる訳はいかなかったのだが、そのボールの出した音にそうも言ってられなくなった


「……おい」


テンテン、と虚しく転がるボールをちゃっかり手にしながら一氏は衝撃すぎる音を発するボールを顔面で受け止めた名前に恐る恐る近付いた。一方そのボールを投げた財前と同じクラスのバレー部の女の子は、自分が投げた球であるにも関わらず信じられないというようにうそ、と立ち尽くす名前に駆け寄る


「大丈夫ですか?私、あんな飛ぶとは思わへんくて…」


もしも投げられた球が何の迷いもなく名前の顔面に真っ直ぐに飛んでこなければ、試合前に財前の一件がなければ、これは事故と自分の中でも処理出来ただろうと名前は顔面の痛みの中考えた。そして明らかな仕返しやな、と思った瞬間に名前はふわりと笑って駆け寄ってきた女子に一言吐いた


「おどれ…死なす」


「…え……?」


こういった場合での笑みに含まれる意味を謝罪に対する誠意、以外にとる人間はその場には居なかった。それ故に名前が穏やかな笑みを浮かべながら吐いた言葉を聞き違えたのでは、と駆け寄った女の子は聞き返す。それに名前は笑顔を崩さずええから戻り、と淡々と対応し彼女を帰らせ試合を再開させた


「苗字、本当に平気…」


「大丈夫や千歳。それより一氏くん、そのボール貸してくれん?」


心配する千歳をはね除けるように口を挟み、一氏に近寄る名前は至極笑みを浮かべている。それに絶対的な何かを見た一氏は思わずボールを渡した。いや、渡してしまった


「もう、勝てるとかそない甘いこと言えへんなぁ…」


ドカッ、と名前から放たれたボールは先程名前の顔面にボールを当てた女の子の顔面にクリティカルヒットしていた


「あ、顔面はアウトちゃうからまだコートに残っときや?」


顔面の痛みと、そう易々とこの試合を終わらせるつもりのない名前への圧倒的な恐怖にその子は自分の行いを悔いて涙した。しかしそれすらもう遅いのは明らかだった


「えぐいわぁ」


外野の財前が他人事のように呟くと同時に、千歳は名前がこんな風な面を持ち合わせていたことに驚き、一氏は自分のチームに居た影の支配者に少しワクワクし、外野の小春は自分の持っているボールをもう使うことはないやろう、と冷静に考えていた









07 END



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