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桜も散り終えた春の日


ガヤガヤ、浮き足立つ生徒達の注目を集めているのは運命競技の出場者たちであった。千歳には昨日言っておいたので、放浪癖のある彼も名前と共に運命競技に出場する選手が並ぶ場所で並んでいる。何故運命競技の出場者が注目を集めているのかというと、それは先ほど発表された各競技の配点にある


「まさか、本当にこぎゃんことが起こるとは…四天宝寺はすごかねー」


呑気やな、と思いながらも名前もまた実感はなく他人事のように感じていた。そもそも四天宝寺の球技大会とは全5種目の競技で各学年の各クラスごとに順位をつけるシステムをとっているのだが、その種目毎にクラスに入る得点は違う。いや、正確に言えば毎年変動する、のだ。その5種目の内の1つ、運命競技によって。運命競技とはまさにその名の通り運命に左右されるもので、まず開会式で運命競技の得点が発表される。全体の1割にも満たない得点であることもあれば、9割に達することもある。また運命競技は何の競技で競うのかは当日まで明かされない為、配点だけでなく万能な人材の扱いまでもを懸ける競技となっているのである。クラスによっては配点が高くなるだろうと運動神経のよい人材を選ぶところもあるが、大抵のクラスでは荷が重いと押し付け合う競技として扱われる。1組はまさにそれである


「今年はクラスの総得点の8割か」


「あー…去年は何したと?」


「去年はビリヤード。一昨年は、確かけん玉やったな」


「地味たいね」


「こう地味なんが続くとな、途端にアクティブな競技が来んねん」


嫌な感じや、と呟く名前を横目に見る千歳は何を思ったのかぽん、と彼女の頭に手を置いた。何らかの反応を求めていた訳ではないのだが、無抵抗に自分に頭を撫でられる名前に千歳は違和感を感じたが今朝見かけた猫を思い出して何故か納得した


「苗字は猫に似とったいね」


「千歳はデカイな」


お互い敬称を捨てたのは間違いなくノリであった。これから始まる競技で共に協力するのだ、という状況がそうさせるのであろうと名前は納得し頭の上の千歳の手をぼんやりと感じていた。そんな中流れるアナウンス


『運命競技に出場する各クラスの女子は前に来てください』


名前が体育委員長に指示された通り前に行くと女子の中に1人、明らかな男の姿が見えた。そもそも運命競技は各クラス男女それぞれ1人ずつの2名が1セットの筈やねんけど、と思いつつその男を特定すれば何故その彼が女の招集の時に現れたのかは明らかなことであった


『ほなら引いたくじ開いて、同じマークのついとる人と一緒になってください』


名前は心の底からきた、と思った。それは何も名前だけではない。相手もまた同じ感情を抱いているのは確かめるまでもない。名前とその男は暫く見つめ合った後互いに含み笑いをした


「まさか名前とここで組むとはね」


「やっぱりウチら何かの引力あんな。小春」


互いに持ったくじを見せ合い同じマークやと頷き合う。この金色小春とは去年同じクラスで席替えの度に隣になった強烈なくじ引力を持った仲である名前は楽しそうに小春とハイタッチをした。それと同時に小春ならば女枠の選手として出場を認められたのも分かる、と納得もした


「浮気か!」


運命競技の男子出場者の側から聞こえる声を他所に体育委員長は遂に競技を発表した


『今年は四人一組で、ドッジボールとしゃれこむっちゅーことです!』


わぁああっ!と生徒が湧く理由はやはりその競技がアクティブで見ていて面白いからであろう。何しろ運命競技は午後から始まり、他の競技は午前で終わる為ギャラリーが凄くなるのだ。地味な球技では盛り上がれない。それに今年は総得点の8割がこの運命競技の順位に反映されるのもあって、出場者とは裏腹に運命競技に出場しない面々は楽しめそうだと笑っている


「なぁどうする?ウチら午後まで暇やで」


「せやねぇ…名前の相方て千歳くんでしょ?とにかく彼がどこかに消えないように見張りしながら作戦でも考えましょうか」


ほんまは球技大会なんかどうでもえぇんやけどなぁ、と思う名前だったが四人一組で今回は8組の運命も背負っているのだと考えて小春の提案を呑んだ








05 END



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