夏は期末試験の後に2
「おかわり!」
「ほなこっちおいで」
たこ焼きの匂いに2階から下りてきたテニス部の面々に自分が居る経緯を説明し、たこ焼きが行き渡って一息つこうかとしたところにリビングから台所に来た遠山金太郎を手招きする名前は再びプレートを温め始める。金太郎はニコニコと名前とは反対側の台所の椅子に座った
「ワイ遠山金太郎いいますねん。よろしゅう!」
「ウチは苗字名前。よろしく」
「名前か!謙也のより自分のたこ焼きの方が旨かったでっ」
なんやて!?と隣のリビングから謙也の声がしてそれからはは、と笑い声が壁越しに聞こえ名前もまた苦笑いをする
「俺も焼くとこ見たかね」
焼いて焼いて、と金太郎に促されるままに焼き始める名前に降り注ぐ金太郎の好奇の瞳に応えるように笑う名前は、ふらりと台所に現れた千歳にもええよ、と笑う
「なんやオトンとオカンみたいやな」
「じゃあ金ちゃんは子供たいね。食費がかかりそうばい」
「ほんまやな」
「…先輩ら、そこはツッコミ入れるとこやないですか。普通」
ツッコミ不在て、と呆れながら現れたのは財前で。手には自分が使ったお皿を持ち、水道の蛇口を捻る
「意外たい。財前が後片付けしとっと」
「千歳先輩、俺をなんやと思ってんすか。皿洗いぐらいしますわ」
「もういらんの?まだ焼けんで」
まだこんなに材料残ってんのに、とタコを入れながら言う名前に財前はそこのゴンタクレが全部食いますわ、と呆れながら言う
「それより名前先輩、俺の電話ブチりましたよね」
カチャ、と洗い終わったお皿を置いた後に金太郎の横に座る財前の真っ直ぐな視線に名前は修学旅行の、初日の夜にかかってきた電話を思い出す。それと同時にブチった理由は謙也だ、とは到底言えそうにないと感じた。やましい、ということは無いのだがそこに高城や白石のことも説明に入れなければならないのが面倒くさい
「ま、ええですわ」
どう返事すべきかを迷っていた名前から視線を外す財前が、もうえぇんとちゃいます?とたこ焼きを指差すので名前はひっくり返し始める
「はー…こっから丸うなるたいね」
「そう。ってか千歳、ここにおるってことはちゃんと勉強してんのやな」
「そら罰ゲームたいね。部長には逆らえんけん」
「そういえば白石くん言うとったもんな。成績に1あったら大会出れへんのやったっけ」
「ばってん、俺の場合は気付くと試験終わってるだけたい」
「そら今日の様子でよう分かったけど、テニス以外に無関心すぎっちゅーのはあかんで。千歳」
はぁ、と溜め息交じりにそう言いながら台所に現れた白石は手に数枚のお皿を持っており、その後ろにはコップを持った副部長の小石川がいる
「なんすか、罰ゲームって」
「修学旅行で俺と苗字さんのペアが優勝したからビリの謙也と千歳のペアに命令できるっちゅーことになったんや」
「あぁ、それで千歳先輩がおるんすね。今日は」
どーでもえぇけど、と携帯を取り出す財前の後ろの蛇口を捻る白石はあ、と自分の包帯の巻かれた左手を見た
「俺が洗おか、白石」
「せやな。頼むわ」
怪我してんのかな、と首を傾げた名前にいつの間にか出来上がっていたたこ焼きを食べ続ける金太郎が手招きをしてひそひそ話を始める
「白石の左手は毒手やねん…あれに触れたら毒が全身に回って死ぬんやで……せやからいつもは包帯でその毒を抑えこんどんねん」
怖いやろぉ、と言いつつもたこ焼きを食べ続ける金太郎に名前はそうなんや、と淡白な返事をして金太郎の汚れた口の周りを拭いた
「やっぱり名前ってオカンやな!」
「そらありがとう」
「せやからちょっとはツッコミましょう。名前先輩」
ふわりと笑う名前に財前は溜め息を入れた
16 END
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