にゃんにゃんにゃん




今日は久しぶりにスザクが丸々休暇だった。
最近は情勢が悪化したためかほぼ毎日軍の仕事。学校に来たとしても午後から招集をかけられたりととにかく多忙で、こうした一日休みは本当に珍しい。本人は認めたくないらしいが、今日のルルーシュがいつもより機嫌がいい理由はこれだろう。
無論彼自身は周りに悟られないよう普段通り接しているつもりだろうが、おかしなところで抜けているせいか浮足立っていることは周囲には丸わかりであった。生来の鈍さゆえ、完璧に気付かれていないぞふははははと高飛車になっているところも何故か彼だと可愛いものだ。

と、それはいい。それは問題ではないのだ。今彼が直面している問題は、

「……で、これはなんだ」
「んー?」

目の前でにっこりと微笑む恋人の姿。そして――人間にはあるはずのない黒い耳が、ルルーシュの頭の上にぴょこんと生えていた。




「何って……猫耳?」
「さも当たり前のように言うな!」

可愛らしくこてりと首を傾げられても誤魔化せる問題ではない。
幸い今は夕食を食べ終えてルルーシュの部屋に来たところなのでスザク以外の人間にこの醜態を見られる心配はないが、もしこんなものが一生くっついていたら……と考えて背筋が凍る。

「大丈夫だよ。効力は長くても10時間くらいだから」
「なるほどそこまで分かるということはやはりお前の仕業か!」

あ、しまったなんて顔をしているスザクに構わずルルーシュはスザクの胸ぐらを掴んだ。

「なんとかしろ。今すぐなんとかしろ」
「無理だよー。なんとかするものなんて持ってないもん」

どすのきいた声で脅したというのにスザクは全く怯む気配はなく、寧ろのほほんとした声で返す。
しまいに「腕、震えてきてるよ?」なんて指摘されては、ただでさえない力が抜けてしまうのも仕方のないことだった。

「で、一体なんでこんな悪戯を?」

ベットに座りながらため息混じりに問えば、スザクはまるで子供のように目を輝かせた。

「それがねルルーシュ! 今日は平成22年2月22日で、なおかつ22時22分になれる唯一の日なんだよ!」
「……だからなんだ?」

胡乱げに聞き返すと、分かってないなあとスザクは苦笑した。

「2月22日は猫の日なのは知ってるでしょ? 去年のこと、忘れてないよね?」

去年?と記憶を思い起こした途端、ぼっとルルーシュの顔が真っ赤になってしまった。
あ、覚えてたみたいだねーなんてへらへら笑うスザクを呪わんばかりに睨むも、真っ赤な顔且つ涙目で睨まれても怖くもなんともない。

「それで、今年はたくさんにゃんにゃんが揃うから、完璧なシチュエーションをセッティングしようと思って」
「な、なにが……!」

何が完璧なシチュエーションだと叫ぼうとしたが、その前に目にも止まらぬ早さで間合いを詰めたスザクに押し倒されてしまう。

「ほわぁっ! ばか、離せ…!」
「無理だって。ほら、時間」

え、と慌ててデジタル時計に目を向ければ、指し示す時刻は――。

「ちょ……ちょっと待て……っ」
「待たないよ。今日の有給の為に頑張って軍の仕事してきたんだし」

それに、時間厳守っていつもうるさいのはルルーシュでしょ?

そう言った途端口付けられれば、ルルーシュが抵抗できる由などなかった。


2010.2.22




あきゅろす。
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