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涙の夜
「零崎ー」
「んー?」
「僕、実は明日で19歳じゃなくなるんだよね」
「…え?誕生日?」
「そ。」
「おまっなんでギリギリにいうんだよぉぉ!?もう12時なるじゃん!あと5分もないじゃん!」
「なるね。あと3分だ」
「はぁ…仕方ない。プレゼントは明日一緒に選びにいこう、好きなもん買ってやる。ケーキも多分予約してなくても大丈夫だろ。あとは…」
「いらないよ、零崎。」

「は?」
「いらないから、明日1日一緒にいたい」
「……そりゃ、構わないけど。いっつもいるじゃん」
「零崎とだけいたい。1日部屋にいて、手とか繋いでたい」
「わかった」

今からとれる近くのホテルあるかなと携帯をひらく。この部屋では音が漏れすぎて、いーたんが素直になれないだろうし、と考えて時計に目をやると丁度日付を超えるとこだった。

「いーたん、誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「ケーキもプレゼントも後日にして、明日はいちゃらぶしよーぜ」
「うん」
「いーたん、いーたん」
「うん?」
「生まれてくれて、ありがとう」
「…うん」


昔は生まれてきてすいませんなんて言い合ったものだが、鏡の向こう側に生まれてくれてありがとうと言える日がくるとは思わなかった。
5月のあの日出会うのは本来有り得ない邂逅だったかもしれないけど、出会ってしまったならそれはそういう運命で。
必然的なものだった。

「愛してくれて、ありがとう」
「おう」

ああ、愛せてよかったと思ったらぽろりと何故か涙がこぼれた。
びっくりしていたら涙の筋をいーたんが指で拭ってくれて、ちょっとだけ笑われた。

「なんで泣くのさ」
「嬉しいと思ったら勝手にでてきたんだ」
「嬉しい?」
「かはは」

ないしょ、と俺はいーたんに抱きつく。
右手は指を絡めて左手で腰を引き寄せた。

こうやって肌に触ったり、柔らかい髪が頬に当たったり、耳の近くでいーたんの呼吸の音が聞こえたりするだけだって、

(俺は嬉しくてたまらない)


俺が一番近くにいて、俺の一番近くにいる。
触れて愛せて抱きしめられる。


「な、キスしていーい?」
「いっつも聞かないくせに…」

返事はなかったけど眼を閉じてくれたから、そっとくっつけるだけのキスをした。

距離は零。
俺が一番近くにいて、俺の一番近くにいる。
愛したやつの特権なんだよな、この涙。

そんな事を思ったらまた涙が零れていーたんの顔に滴がついた。

しあわせなみだ




零僕祭!出会ってくれてありがとう、生まれてくれてありがとう。
…うん、いーたんの誕生日3月だってちゃんとしってる笑
(5/23)


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