病院の夜 麻酔が完全に切れる前の、ぼんやりした目覚め。 目を瞑ればすぐにおちてしまう様な微睡みの中の感覚。 もう慣れたもので、頭の覚醒具合とは裏腹に色々な事がわかる。 手術が終わった事。 もう病室にいる事。 院内の消灯時間を過ぎてる事。 すぐ側に、殺人鬼がいる事。 「まーた入院してんのかよ、いーたん。ほんと病院好きな」 「好きな訳じゃない……怪我したんだ」 「お前、病院が好きでわざと怪我してるんじゃねえか?ここまで入院多いと疑われるぞ」 「勝手に疑ってろ」 「あんなあ……」 つけたばかりのギブスに指を這わせて、殺意たっぷりに なあ、と笑顔を向けられる。 「俺は、気を、つけろと、言ってんだよ、戯言遣い」 はいはいと、誤魔化すように適当な相槌を打つ。こんな近距離で殺意撒き散らされても殺されない確信があるのに、同意せざるを得ない。怒った零崎は怖いのだ。 「わざと怪我する時は君に頼もうかな。綺麗にやってくれそうだ。術後も経過よさそう。」 「おう、任せとけ。術後も何も心配いらない、地獄直行コースで綺麗に殺ってやるよ」 「頼もしいよ、人間失格」 「他ならぬお前の頼みだからな、欠陥製品」 久しぶり。僕はギブスがない方の腕で、鏡に触れた。 この人をおいて死ねないと思った (7/6) [*前へ] |